2011年02月26日

死にたいヤツら

 弦巻楽団「死にたいヤツら」(作・演出弦巻啓太)を2月26日(土)、札幌・サンピアザ劇場で見た。2006年11月、ターミナルプラザことにパトスとコンカリーニョで「死ぬ気で遊ぶ 近松門左衛門祭り」と題して行われた「遊戯祭06」の最優秀賞作品(本作はパトスで上演)であり、その年の「札幌劇場祭2006大賞」(当時はこういう名称ではなかったが、混乱を避けるために現行の名称で表現)もW受賞した伝説の作品の再演だ。
 近松を研究していた大学教授竹本(温水元)の四十九日法要の晩。妻千夜(菜摘あかね)、千夜の妹初実(森田亜樹)、家政婦ウメ(斎藤もと)、竹本の教え子の大学生小春(脇田唯)とその彼五郎(茅原一岳)、竹本の同僚で英米文学教授の武蔵川(平田渓一)が居間でひと息ついているところに、弁護士(温水が2役)がやって来る。竹本が遺言状を遺しており、そこには「最愛の愛人」に遺産2億円を相続すると書かれているが、その「愛人」が誰か分からないというのだ。と、「私です!」と挙手する初実、ウメ、小春、さらには同性愛者?の武蔵川。果たして「愛人」とは誰か、2億円の行く先は? またその愛の日々の実態は−といったコメディー。温水だけが初演と一緒の役で、ほかの6人は初の配役だ。
 ここで現実的なことを言えば、相続先を誰々と明示しない遺言書は本来、効力を持つはずがない。でも、2億円と聞いて「愛人です」と名乗りを上げた面々には、そうした基本的な法律知識が欠けていたのだろう、と私はあえて好意的に解釈する。この点が実は、この謎解き的要素もあるコメディーの重要なポイントであり、そう考えるのが一番、ラストの意外な展開にも納得がいくのだ。
 「曽根崎心中」や「冥途の飛脚」、「心中天網島」、「心中宵庚申」といった近松の名作のエッセンスを随所に取り入れたパロディー精神に溢れ、テンポもとんとんとんとんと調子が良く、自称愛人たちの「あの愛の日」をいちいち再現する芥川龍之介の小説「藪の中」的な筋の運びも弦巻の面目躍如。役者たちの演技はあえて大振りに演出され、そうしたところに、先に書いた、現実にはあり得ない遺言書をモチーフにしたコメディー芝居の“あり得なさ”を見る側に意識させずに楽しませる面白さがある。そういう意味では、弦巻が確信犯として創作したウェルメード・コメディーとも言えよう。もちろん、近松の本のどれをも知らなくても十分に楽しめることは請け合いだ。
 竹本と弁護士の2役を演じ分けた温水が的確。妻千夜役の菜摘も彼女自身のほんわかした感じが役柄に似合っていて良かった。
 27日(日)は15時開演。
 ここでビッグニュース!
 本公演はサンピアザ劇場企画公演“プレミアムステージ”として上演されたが、今年からサンピアザ劇場で公演する演劇を対象に「神谷演劇賞」が設立された。
 厚別区在住で演劇を愛する神谷忠孝・北大名誉教授と審査委員が、1〜12月にサンピアザ劇場で公演された演劇の中から優れた作品を表彰するもので、賞金は10万円!(聞くところによると、神谷氏のポケットマネーらしい)。審査委員になりたい方は「サンピアザ劇場で芝居を観る会」(事務局は北海道演劇財団011・520・0710。年会費8000円で現行で最低5公演は招待)に入るだけ! しかも札幌市内の他の小劇場に比べて、サンピアザ劇場にはまだ空きがある(ようだ)! これは演劇を作る側にとってもおいしい賞だし、見る側にも二重の楽しみができるのではないか? 審査は今回の「死にたいヤツら」から始まっている。はたして神谷氏はどう楽しんだだろう。
posted by Kato at 21:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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