2014年07月24日

再編・十二夜

 劇団アトリエ「再編・十二夜」(原作ウィリアム・シェイクスピア、脚色・演出小佐部明広)を6月28日(土)、札幌・サンピアザ劇場で見た。喜劇だから笑って見ていたが、なかなかの出来栄えと感じた。
 あまりに有名な戯曲なので、すみませんがあらすじなどはウィキペディアなどを参照してください。僕が見たのは札幌座がまだTPSだった10年以上前の木野花の演出の芝居。でもそれよりぶっ飛んだ気がして、ずっと面白かったな。
 アトリエ所属の劇団員としては小山佳祐がオーシーノ公爵を演じたが、伊達昌俊や有田哲、柴田知佳は意外にも脇に回って。男装のシザーリオことヴァイオラは原彩弓、オリヴィアは飛世早哉香が務めた新鮮な配役。
 「再編」と銘打ったからには、小佐部はこの芝居を少々ギャグ過剰気味のコントと見立て、言葉や動きも現代の日本人にわかりやすく仕立てたのだと思う。それが成功したのだろう。実際、見ている僕には、シェイクスピアの時代の人たちがこの芝居を、ある種のドタバタ劇として見て楽しんでいることがたやすく想像できた。特にyhsの能登英輔が演じたキューリオ(公爵の使い)などは、時代を超えた「ぼけ役」で、ほほ笑ましい存在感があった。
 シェイクスピアの喜劇をこうしてコントと見立てた上での上演というのは、北海道では案外少ないのではなかろうか。喜劇といいつつも、いつもどこかシェイクスピアという存在の「高尚」なものに引きずられている気がする。
 小佐部にあっては今後、「間違いの喜劇」とか、ほかにもいくつもあるシェイクスピア喜劇を「再編」で舞台化していただきたい。そうするうちに「ハムレット」「オセロー」「リア王」「マクベス」のいわゆる四大悲劇の演出にもなにかしらの有効な手がかりがつかめられるのではないかと期待する。
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2014年07月06日

アンダー・ザ・レインボウ

 弦巻楽団「アンダー・ザ・レインボウ」(作・演出弦巻啓太)を7月6日(日)、札幌・シアターZOOで見た。チラシには「(結団以来の)第20回記念公演は、原点に立ち返るスリラー・コメディ」とあるが、僕には「サイコ・サスペンス・スリラー」に思えた。まあ、どちらの言い方にしてもよくできている。見ているうちに、肌がぞわぞわ毛羽立つ。昔の夜の連続テレビドラマにあった、夏の納涼ものとしても一押しだ。
 キャリアはそこそこあるが、未だ名も無き作家(櫻井保一)。新作に行き詰まった作家は、出版社(編集者=町田誠也)の計らいで静かな景勝地のホテル「ブルー・レインボウ」に缶詰になる。執筆に専念出来る、と思ったそのホテルで、作家は隣りの部屋に宿泊する中年夫婦(夫=温水元、妻=栗原聡美)と知り合う。交流を深めるうちに、作家は夫婦の「秘密」を知ってしまい…。やることなすことあべこべなホテルマン(深津尚未)、善良だが気の利かない編集者、そして、作家にとって一番厄介な愛人(袖山このみ)を巻き込んで、「ブルー・レインボウ」の夜は思わぬ惨劇に染まっていく。
 上演時間95分。近年の弦巻のオリジナル作品として僕は好きだ(別にここ数作が「嫌い」だったわけではない。ただ弦巻オリジナル作品の場合、題名がカタカナ英語が多くて、どれがどれだったかが僕には記憶しづらいということは確かだ)。それだけうまい仕上がりだった。95分間、過不足がないし、行きつ戻りつ、あるいは一気の矢印的転換の自在にもよく目配りが利いていて、見応えがある。
 芝居は、作家が缶詰にされて書く小説と、中年夫婦の人生が二重写しになるという図式だ。その作家の夢と現(うつつ)、あるいは想像と現実との合わせ鏡のような作劇の仕方が、うまい。しかも、こわい。僕は49歳で、おそらく劇中の中年夫婦とさほど年齢は変わらないと思われ、はははーと納得するところがいくつもあった。それはそれで、自分ながらに、こわい。なにせ作家が書こうとしている小説は「殺人もの」だからだ。
 芝居の肌触りで思い出したのは、英国の作家ダフネ・デュ・モーリアの小説「レベッカ」(1938年)だ。英国出身で、渡米第一作であるアルフレド・ヒチコック監督の映画(40年)が米アカデミー賞作品賞を受けた。DVDにもなっている超名作だ。それだけの超名作を思い出しながら大げさではないと思うのだから、この「アンダー・ザ・レインボウ」も良い作品に間違いないのだろう。僕は推す。
 この芝居は、たとえば(北海道出身なら)大泉洋とか、人気絶頂の配役で見たいなとも思った。
 開演は7(月)〜10(木)日の19時30分。暑い日が続くようなので、ぜひ心の涼みにお薦めする(扱っている題材の割には、えぐくない)。
 
 さて、本当は6月末に見た劇団アトリエ(シェイクスピア)と風蝕異人街(野田秀樹)についても書きたいのだが、なんだか疲れてしまった。間違いなく書くので、関係者やファンの方におかれてはもう少しお待ちいただきたい。ここのところサッカーW杯で個人的視聴にも仕事的振る舞いにも疲れ切っている。きょうの弦巻楽団はそうした意味でも「ライト・ホラー」の感じで、後味が良くて助かった。
posted by Kato at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする