2014年04月23日

村上春樹を教えてくれた彼女へ、ありがとう

 「伊達緑丘高校YS札幌厚別高校」の項目のコメント欄に突如、カナダからのメールが来て、驚かれた方は多いと思います。僕もそうでした。
 彼女が、その項目で僕が書いた、親戚ではなく初めて、ここではないほかの場所に二人きりで行った初めての異性です。プチクラス会の幹事の女性あてに、出席者全員へのコメントを書いて送ってくれていて、僕は幹事から転送されてきたそれは読んでいるし、彼女とじかにメールのやりとりをしているからメルアドはわかっているはずなのだけれども、こうして僕のブログの該当欄にコメントを送ってくれるところなんか、機転が利く彼女らしいなと思います。ありがたいな。
 彼女はなにより、僕に村上春樹を教えてくれた人です。「羊をめぐる冒険」。手持ちの春樹作品集を見ると、1982年8月号の「群像」(講談社)所収とあるから、ちょうど高校3年の夏だね。「加藤くん、これ、おもしろいよ。読んでみて」と彼女。僕はそれほど文学青年だったわけではないけれども、はまりました。で、さかのぼって「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」とね。それまでの、眉間に皺を寄せて読まなければならないはずの「文学」が、とても身近になった気がします。
 昨年の夏、あるメールがブログに届きました(札幌ハムプロジェクトの管理者の心遣いで、公には載せていません)。
 「村上春樹の『風の歌を聴け』を読んでいたら、加藤くんを思い出しました。試しにグーグルで検索したら、このブログがヒットして、来歴も合っているので、ここに送ります」
 東京農工大の三曲研究会の旭川出身の友達でした。25年以上ぶり。彼も僕も尺八吹きで、琴を弾きながら歌う乙女をいつも見ている僕が「尺八を吹きながら歌ってもいいじゃないか」ということで、ダウンタウン・ブギウギバンドの「身も心も」を関東学生三曲連盟の演奏会で尺八2管、ギター、ベース、ピアノで演じたのです。おおいに歌いましたよ、僕も彼も。
 閑話休題。彼女はカナダに住んでいます。ローリング・ストーンズのコンサートに200回以上、行っているとのこと。20歳から行っているとしても、1年365日だから30年として計算すると、55日に1回は行っている勘定。すごいな。しかも、それがカナダ、北米だけじゃない。フランスとかヨーロッパにも行くんだって。で、一緒にいらしたパートナー(5歳ほど上)との出会いも、ストーンズのファンのパーティーだとか。
 驚いたのは彼。航空管制官をしていたのが退職して、今後は年金で暮らしていくとのこと(持ち家あり)。ふつうの日本人なら60歳で退職して、それでも年金が出ないからどこかに再就職を探しますよね。それが、これからは年金で悠々自適にストーンズとのこと。
 帰宅して妻に話したら(妻は4歳上ですが、耳年増でもあり、雑学王でもあります)、欧米のアッパーはいかに短い年数で稼いで余生を遊んで、あるいは自分として暮らすかがトレンドだとのこと。あいたたた。
 「アベノミクス」で(大)企業の国際的な競争力を向上するだとか、ベースアップがどうだとかいっている日本とは、「労働」についての基本的な考え方が違う気がします。労働についての考え方が違うというのは、つまるところ生き方が違うということ。人生観が違うということ。これは「アベノミクス」にしてもどうしようもないんだろうな。僕は養う子どももいないし、金は使う分だけあればいいと思うのだけれども、それにしては金が足りない。なんともうまくいかないですね。あ、渋い話はやめましょう。
 カナダの真由美、元気でね。
posted by Kato at 05:14| Comment(3) | TrackBack(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月20日

想稿・銀河鉄道の夜

 Theatre Company Ort-d.d(東京)「想稿・銀河鉄道の夜」(原作宮沢賢治、脚本北村想=1986年、演出倉迫康史)を4月20日(日)、札幌・シアターZOOで見た。
 出演は宮沢賢治、ザネリなどに小林至、ジョバンニに代田正彦、先生、鳥捕り人などに舘智子、尼さん、少女などに藤谷みき、カムパネルラに八代進一の5人。
 Ort-d.dといえば、昨年3月、シアターZOOでの休憩含め上演時間2時間40分という三島由紀夫「わが友ヒットラー」での“札幌デビュー”がいまなお鮮烈な印象。三島ならではの流麗な言葉を使った台詞劇で、動きなどはあまりないためともすれば飽きてしまいかねないのに、緻密な演出により胸にぐいぐい来て説得力があって。
 今回は80分という小品だが、「大人の俳優たちの思考や言葉を通すからこそ浮かび上がる『銀河鉄道の夜』の世界」(パンフレットより)が僕にはとてもしっくりきた。実はかねて「銀河鉄道の夜」という物語はそれほど仰々しく、あるいは大がかりに上演、上映など表現されるべき作品ではないのではないかと思っていた。言い換えれば、人がみな誰しも持っている心の中の小宇宙にそっと寄り添う物語、表現であってほしいなというか。もちろん好みなのだけれども。
 倉迫の今回の演出を書けば、ZOOの通常の客席を取っ払って、椅子を中央奥以外にコの字型に配置。舞台中央に長細いテーブルがやや斜めに置かれている。すでにそこは“夜”の感じ。食事付きの夜会といった趣だ。
 そして不思議にも「ここではないどこか別の場所」に通じているように思えてくる。
 テーブルの上では3両編成の客車を引っ張る蒸気機関車の小型模型が走る。もうここで、この芝居は僕の心の中の小宇宙と響き合う。小さな劇場の小さな空間が僕の心の中の小さな世界と響き合って、無限の、夢幻の世界へと誘(いざな)われている。
 今回は「ヒットラー」の時とは違って、ぐいぐい胸に迫ってくるという感じではなく、むしろ後から後から登場人物たちや彼らが背負っている背景、言葉たちがじわりじわりと染み込んでくる。ジョバンニが、カムパネルラが、客船が沈んで亡くなり天上へ召される人たちが…。
 昨年の「ヒットラー」にしても今回の「銀河鉄道」にしても、僕は倉迫の戯曲の読み込み方や、そこから展開される演出=芝居=世界観が好きなんだろうな。最初に書いたが、僕には「しっくりくる」というのがぴったり。
 ぜひともみたび来札公演をしていただきたい。次はどんな既成、あるいは名作戯曲をどういうふうに料理していただけるのかがとても楽しみなカンパニーだ。
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2014年04月09日

サンピアザ劇場・神谷演劇賞が熱くなる…なろうよ、しようよ、みんなで

 ここ10日ばかり演劇を見ていないので、作品としては更新をしていません。
 なんだか数日前に100人もの方がいらしたようで、ごめんなさい。
 札幌ハムプロジェクト座付き劇作・演出家兼札幌座ディレクターすがの公くんが8年前、外勤記者を脱した僕に「加藤さん、(北海道新聞の)文化部から離れても、いつまでも劇評を書き続けてくださいよ。僕、読みたいもん、加藤さんの劇評。心配しないで、場は僕がつくりますから」と善意でつくってくれたブログだから、つまり私が積極的に何かを発信しようと思って創設したブログではないから、では決してありません(ブログのトップページの自己紹介が「他己紹介」になっているのは、そういうわけです)。
 芝居を見たら、書きます。いいもの、また、真逆に変なものであれば。なにか、言葉が浮かべば。
 でも、力作芝居を見るには僕なりにちょっと疲れていて、いまのところ、少しだけごめんなさい(3月12日の博多発信「札幌座『西線11条のアリア』・再観」は「力(りき)」入れて書いたよ)。
 泣きながら読んだとおっしゃる方もいらっしゃって…。あれは劇評じゃないですね。僕の随筆です。
 でもでも、そうそう、カンパニーのみんな、札幌劇場祭の大賞狙いに、上演を秋にばっかり偏っていてはもったいないよ。
 僕が審査員の一人であるサンピアザ劇場上演作品対象の神谷演劇賞(賞金10万円)は、審査対象が9月〜翌年8月公演になったことだし…(初っぱなの今回に限り1年半)。
 っていうのはね、過去の札幌劇場祭大賞の半数近くをサンピアザ劇場での上演作品が占めているから(劇団千年王國2回、イレブン☆ナイン1回。特に千年王國は「狼王ロボ」で固定椅子を生かして狼が劇場、客席を駆け巡り、「ローザ・ルクセンブルク」で椅子の「赤」=「赤軍」のイメージをを生かしていたよね)、僕たちサンピア神谷賞審査員が「俺たちの存在価値がなくなる。これだけいい作品がそろっては、札幌劇場祭の大賞作品を追認するだけになる。審査時期をずらして、札幌劇場祭に並ぶ夏の演劇賞としてPRしてはどうか」と思って、ちょっと時期をずらしてみたの。
 文学賞でいえば、たしか新潮新人賞が3月末締め切り、群像新人賞が10月末締め切り、文学界新人賞が6月、12月各締め切りというのと同じようような考えさ。
 つまり、これからのサンピア神谷演劇賞としては、特に春から夏が熱くなるだろうし、そうしたい、というか、そう期待してるわけ。
 これにより、札幌の演劇の旬は
 1・1〜2月の札幌演劇シーズン冬(既存の名作)
 2・3〜7月のサンピア神谷演劇賞、熱い春〜夏(対象作品としては1年間だけれども、特にこの時期の芝居を評価するシステムが、いまのところはないよね)
 3・8〜9月の札幌演劇シーズン夏(既存の名作)
 4・11〜12月の札幌劇場祭
というふうになるってわけさ。
 あ、空いてる10月もサンピアザ劇場は待ってます、すてきな作品。
 これにより、春先のいま時期の公演がこの先、われわれ審査員にはとても刺激的になることを期待しているの。
 サンピアは特に学生諸君の利用が多いから、鮮度抜群、ぴちぴち、ぱちぱち。
 劇団アトリエの小佐部明広くんの公へのデビュー劇場でもあるし、待ってまーす。 
posted by Kato at 06:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする