2013年09月29日

ユー・キャント・ハリー・ラブ!

 弦巻楽団「ユー・キャント・ハリー・ラブ!」(作・演出弦巻啓太)を9月28日(土)、札幌・コンカリーニョで見た。
 「恋をしたことがない」大学のシェークスピア文学専門の英文学教授、奥坂雄三郎(おうさか・ゆうざぶろう、松本直人)は、ある日、ラジオから聞こえてきた気象予報士、冬樹里絵(曽我夕子)の声に「恋」をする。初めての感情に戸惑う奥坂は、これまでの学説も持論も放り投げ、ひたすら「恋」に向かって暴走する! 助手である姪(山川瞳)や教え子(上西佑樹)までも巻き込みながら…。果たして、奥坂の遅すぎる初恋は、成就するのか?!(以上、チラシに一部加筆した)。出演はもう一人、里絵の友人の出版者女性編集者に山田ともる。
 弦巻が2005年にリアル・アイズ・プロダクション(札幌)に書き下ろし演出し、レッドべりースタジオで初演。07年に「リアル−」に演出し、札幌市教育文化会館小ホールで再演。今回が3演目で「弦巻楽団バージョン」としては初だ(私も今回が3観目だが、07年に「ユー・キャント−」とか「リアル−」などを英語で書いたら文字化けして驚いたので、今回はカタカナで書かせていただく)。
 弦巻得意のウェルメードコメディー。シェークスピアの戯曲からの的確な引用が多いが、知らなくても読んでいなくても見ていなくても全然大丈夫。芝居の中で小さなきっかけとか伏線とかがうまく張られていて、あらためて弦巻の劇作は巧みだなとつくづく思わせる。
 以前に、ファーストキスを目指す初デートには映画「許されざる者」(オール北海道ロケ。絶賛公開中)の観劇はお薦めしないと書いたが、そうした意味ではこの芝居などよいのではなかろうか。小中学生には現在進行形の、私など中年には過去形の思い出としての「初恋」が、きっとぴかぴかしてくる。「許されざる者」を見るのは、この芝居がきっかけで「初恋」が「本恋」になった一週間後がお薦め。
 「ヨミガタリストまっつ」こと松本は不動の主役だが、やはり戯曲から想起されるイメージにぴったり(もともとが松本への当て書きらしいから当然か)。実はこの大学教授役は松本がもっと年齢を重ねてもずっとできるだろうなあと思う、というより、もう少し加齢してからこそがいっそう面白くなるのではないかとひそかに期待している(私は小樽出身の名優・中村伸郎=故人=の顔を思い浮かべている。例えば、私は残念ながら見ていないが、東京・渋谷の今はなきジャンジャンで週一ペースでロングランした「授業」(作イヨネスコ)とかをね。そういえば「ユー・キャント−」は「授業」をもどこか感じさせる…コメディーと不条理演劇との違いはあれど)。
 ほかの4人もうまくはまって、今回もすてきな芝居になった。特に印象的だったのは山川。狂言回し的な役柄だが、むやみやたらに“自家発電して発光”しすぎることなく、むしろ抑え気味(こうした役柄が“自家発電して発光”して浮いて、結果、芝居全体を低水準にしてしまう場合がけっこう多い。もちろん演出家の責任だが、舞台上では役者の持ち味が試される)。でも観客をしっかり笑わせ、座をもり立てると同時に引き締め、その上に主役の2人を引き立てるという、なんとも難しい役を巧みにこなしていた。これまでの弦巻楽団では、どうして印象に残らなかったのか不思議なほどだ。それが「脇役」としてのうまさ、妙味ということだろうか。
 楽日29日(日)は14・18時開演。
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2013年09月23日

ザ・ダイバー

 劇団アトリエ「ザ・ダイバー」(共同脚本野田秀樹、コリン・ティーバン、演出小佐部明広)を9月22日(日)、札幌・シアターZOOで見た。
 良い芝居だった。私にとって劇団アトリエは新進気鋭として期待が大きい分だけ、ここしばらく「小佐部率いるアトリエがこの程度の芝居なの? これでいいと思ってるの? 旗揚げから見続けているのに…」という疑問符のつく作品が続いていたのが正直なところだったのだが、今回はとても良かった。言葉と身体性という両面できわめて難しいだろう野田の作品に挑み、高みを臨んだであろうことで、一皮むけたのではなかろうか。今後にいっそう期待が高まる。
 札幌で本作に挑んだのは私の知る限り実験演劇集団「風蝕異人街」(2011年5月に当ブログに記載)以来2カンパニー目だが、「風蝕を見たから物語はわかっているし、今回は見なくていいや」というふうには決して思わないでいただきたい。むしろ、このアトリエ版のほうが「野田地図」本来の野田演出に近く、エッセンスが凝縮されている。
 上司と不倫した挙げ句、彼の幼子2人を放火殺人した罪に問われた、多重人格の疑いのある女(柴田知佳)の心の闇を、精神科医(小山佳祐)が拘留期限までに解き明かそうとする。女は、芝居の題名の由来でもある能の「海女」の物語に共鳴し、さらに「海女」での非業の死者である母の像が「源氏物語」の桐壺や夕顔、六条御息所といった光源氏(有田哲)を取り巻く女たちに重なって、女=山中ユミ(柴田)はこれらの女たちの人格に次々と変わっていく。警部・頭中将は伊達昌俊、検察官は有田。
 作品は東京・世田谷パブリックシアターの「現代能楽集」シリーズとして2008年に英国・ロンドンで初演。その年に東京・シアタートラムでも上演された。09年に野田の東京芸術劇場芸術監督就任記念プログラムとして、日本バージョンが野田(精神科医)、大竹しのぶ(女)、渡辺いっけい(警部・頭中将)、北村有起哉(検察官)で上演された。私はWOWOWの放送で、能の様式美を大胆に取り入れて魅せられた英国バージョン、野田と大竹の台詞の速射砲的応酬が印象深かった日本バージョンの両方を見ている。
 最近になってどこかのブログで読んだのだが、当時のインタビューで渡辺いっけいはこの作品について、ものすごく大竹しのぶ寄りになっていた野田演出を心配していたそうだ。でも、そんなこと言っていたら、オリジナルの英国版の女キャサリン・ハンターのものすごい存在感はどうしようもないだろうに。私の東京の観劇友人は昨年、キャサリン・ハンターの「THE BEE」(作・演出野田秀樹)と、猿が人間になっていく彼女の一人芝居(作・演出不明)を見たらしいが、それこそ「信じられないほどすごい!」と言っていた。
 そんな思いも胸に見たのだが、柴田は浮いていなかったし、小山、伊達、有田もちゃんとしていた。ちゃんと、舞台に、存在していた。風蝕の「ザ・ダイバー」は様式美で見せたが、アトリエは「ただ、そこに、その人が、ちゃんといる」ということを見せてくれた。それだけで十分だ。そして、この4人は4人とも、すごくいいなと思う。
 女1+男3という芝居なら、野田の作品だけでも、まだ「赤鬼」とか「THE BEE」とか、ある。小佐部よ、絶対に挑んでほしいな、この4人で。赤鬼役は体の大きさで彼に決まりでしょう? とかね、もう、楽しみにしてるの。「赤鬼」のラストのあのしみじみ感、札幌だけでなく、なかなか演劇界では出せないと思うんだけどなあ、挑んでみない? この4人+もちろん小佐部演出で、頼むよ。
 「ザ・ダイバー」、楽日23日(月)は正午、16時開演。ぜひ、ご覧ください。
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2013年09月12日

次にテレビでエレキに会えるのはいつのことやら

 日付が変わったので昨晩のことだが、自宅近くのラーメン屋でテレビの日ハム戦ナイター中継を見ていたら、CMにyhsの小林エレキが出てきて「おっ」と思った。
 JA共済のCM。設定は戦前の日本らしく、着物姿のエレキとこれも和装の女学生風の女性が出会うというか、別れるというか、そんな感じ。おそらく「伊豆の踊子」ぽかったりもしたから、別れの場面かもしれない。音も出ていたはずなのになぜか記憶に残っていない。
 本人には未確認だけれど、エレキに間違いない。端正な顔立ちだから、和装の書生さんがよく似合っている。
 CMでは城島イケルさんとか、かつてTPS(現札幌座)にいた永利靖さんとかを思い出すなあ。
 エレキのCMはいつから流れていたんだろう。自宅ではほとんどテレビを見ないので知らなかった。また見て、今度は台詞も聞きたいところだが、そのCMがいつ放送されるかばっかりは(一社提供の番組でもない限り)わからいものね。
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2013年09月11日

演劇つれづれ、とはちょっと違うけれど…

 きょうは勤務が休み。演劇には関係のないことを書きます。思い煩う病ということでは一緒ですが。気の向いた方だけお読みください。
 きのうは夕飯を終えて、自宅マンションから歩いて5分とかからない、通いつけの一軒家のバーに行きました。「ルラーシュ円山」という、もともと京王プラザホテル札幌のバーにいた男性2人が7年前に始めた、本格的なバーです。 http://www.bar-relache.com/
 いつもはカウンターに2人いるのですが、月、火曜日は1人ずつの交代勤務なので、きのうはOさん1人。僕のほかに客はおらず、来春に新入学する息子さんをお持ちの30代のOさんと映画の話などをしていました。
 ふと気が付くと、キース・ジャレットのピアノソロがかかっていました。静かで端正。それでいて奥深いものを噛みしめている音です。僕は「3・11」のことを思い出していました。あの日のこと、あの日からのこと、たくさんの涙、別れ、悲しみ、そして出会い…。
 と、生中継で見た2020年の五輪開催地を決める前のプレゼンテーションが頭に浮かび、「長州の安倍首相はあからさまに会津(広い意味で福島県)を切って捨てたな」と思ったのです。地図も位置関係も「切って捨てる」という意味も、なにもかもがすごく雑ぱくな感じだけれど。
 仕事でプレゼンテーションというものをしたことがない僕にはそうした場合はどうするべきか想像することしかできませんが、あの日、安倍首相は「原発事故の対応はこれまでのところ完璧」みたいな、日本人ならほとんどの人が「嘘だろう?」と思うようなことまでもを言うべきだったでしょうか。そうまで言って招致するべきものだったのでしょうか、東京五輪は。「いまはちょっと大変だが、これからはうまくいく」程度でよかったのではないかというのが僕の正直な気持ちです。それで後はIOCの偉い人たちが、経済的にやばいマドリードか、政治的にやばいイスタンブールか、環境・健康的にやばそうな東京かを選ぶべきだったのではないか、と思うのです。
 そういったことをOさんに告げると、彼は、カナダに住む高校時代だったかの友人から「日本の人って、よく平気でいられるね」と驚かれたと言いました。そうですよね、地図帳でカナダと日本の国土を比べたら、僕もぞっとします。
 1964年の東京五輪の時、僕はまだ母のお腹の中でした。でもその後の映像などで、きっと素晴らしい五輪だったんだろうなという想像をしています。実際に開会式は演出過多ではなく、とてもシンプルだったようだし、閉会式も誰が演出したわけでもなく、各国の選手たちが仲良く入り乱れて国立競技場に入場してきたらしいです(市川崑監督の映画「東京オリンピック」でわかります)。五輪自体がまだ商業主義でもないし、ちょうどそのころに独立したてのアフリカ諸国がいっぱい参加したり。ただ「昔は良かった」ではなく、本当に「すてきなオリンピックの最後」だったらしいです(ちなみに冬季大会の「すてきなオリンピックの最後」はやはり札幌。この札幌大会で「アマチュアVSプロ」問題が表面化します)。
 でも、そんなことよりなにより2020年の7月、21世紀・東京五輪の開催と同時に、僕は「長州が会津を切って捨てた日」を思い出すでしょう。今からそんなことしか考えられない自分が情けなくて、残念でなりません。素直に喜びたかったのに…。
 東京五輪が決まってから知ったことですが、開催日程は7月下旬から8月上旬らしいですね。屋外競技の選手たちもきっと大変だろうなあ。
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2013年09月05日

弦巻楽団「果実」の9月公演はありません!!

 演劇情報誌「シアターガイド」10月号を買って、札幌座チーフディレクター斎藤歩さんのインタビューを読んだ。
 札幌座「霜月小夜曲(ノヴェンバーセレナーデ)」の東京公演に合わせた企画だが、斎藤さんの札幌演劇に懸ける思いがよく伝わってくる、うまくまとまった記事だった。
 と、「全国地域演劇情報」の「北海道」を見ると、弦巻楽団が26〜28日に札幌・サンピアザ劇場で「果実」を上演する旨が載っている。
 「へえー、弦巻楽団は9月27日(金)から29日(日)までコンカリーニョで『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』を上演するし、1カンパニーで究極の札幌演劇シーズンを実現するつもりなのか。すごいなー。こりゃ、一日、弦巻楽団漬けだな」と思ったのだが、弦巻啓太くんは今まさに「霜月−」の出演者として東京・道内ツアー中で忙しい身だし、なんだか胸がざわざわする。
 思い切って午後、弦巻くんの携帯に電話した。
 すると…「きのう僕も『シアターガイド』を見て、ありゃー!!と思ったんです」と弦巻くん。
 どうやら同誌編集部のミスで、昨年の公演の前触れ記事を再び載せてしまったらしい。こんなこともあるんだな。
 「編集部には訂正をお願いしたんですが、もう発行されちゃいましたしね。どうしたらいいのか…」と弦巻くんも心配そうだった。
 で、何人の方に伝わるかどうかはわからないが、せめて演劇病に感染している人だけにはお伝えしようと思って、こうして書いている次第。
 9月にサンピアザ劇場で「果実」の公演はありません!!
 上記のコンカリ公演はありますよ。主演は再々演にして不動の「まっつ」こと松本直人さん。
 にしても、弦巻くんは忙しそうだな。
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2013年09月04日

演劇つれづれ

 ここ2週間、前売り券を買っていたのに突発的な用事ができて芝居を見られなかった(イレブン☆ナイン「エンギデモナイ」、パセリス=東京=「なんでもゆるしてあげる」)。その鬱屈なのかどうか、演劇の夢ばかり見て、はっとして目が覚める日が続いている。
 覚えているものだけでも@車通りの少ない道路沿いの暗く広い区画に小劇場が四軒固まってあって、薄ぼんやりした明かりの中で演劇祭が開かれており、そこでシアター・ラグ・203の前衛的な芝居を見ている夢A歌舞伎座のように3階建てくらいの天井桟敷もあるすてきな劇場で東京乾電池がシェークスピア「夏の夜の夢」を上演しており、札幌の役者も大勢出演している祝祭的な楽しい夢(柄本明さん、NHKの番組取材中にペルーで強盗に襲われたとのことですが、ご無事で本当になによりでした)B札幌座のシアターZOOではない地上劇場(むしろテントかな)での公演の最後に上空からヘリコプターが降りてきて、そこから吊されたブランコに斎藤歩さんが必死にしがみついて、そのままヘリコプターとともにどこかに飛び去っていってしまう夢Cイナダ組公演に、あの高倉健さんが出演されることになって!! 僕が案内されたイナダさんの部屋には健さんグッズがいっぱい。ただイナダさんはどんな芝居にしていいものやら思案投げ首といった夢。
 夢だから荒唐無稽なのは当たり前だが、こうも続くと、次はどんな夢を見ることやらと楽しみだったり不安だったり。そうとう僕もたまってるな。
 その鬱憤晴らしというわけではないが、9月1日(日)夜、yhsが初めて開いたというススキノでの「うたげ(交流会)」に参加してきた。会費2500円。スナックのようなところで、つまみはせいぜいポテトチップスとかナッツとかだろうと思って、自宅でカレーライスを食べていったら、これが大間違い。yhsスタッフのご両親が40年にもわたって経営されている生演奏可能な広いお店で(“舞台”にはドラムスとかギターとかがずらりと並んでいる)、料理もピラフからザンギ、ポテトフライ、ラーメンサラダ…と豪華。あまり手を付けられず、後悔しました。
 南参は「yhsのプレイヤーは人見知り、恥ずかしがり屋ばかり」と言うが、そんなことはない。けっこう如才なく話せる人が多い。先に書いたとおり、交流会は今回が初めてだが今後も行うとのことで(ボウリング大会とか)、yhsファンもそうでない人も一度行ってみるといいと思う。札幌演劇の一端を垣間見られるんじゃないかな。
 僕が公演の打ち上げとかパーティーとかに呼ばれたりするのは、5カンパニー程度かな。そうした場所にはできる限り出席するようにして、ブログには書かない公演の感想だとかを話したり、カンパニーの今後の方向性のこととか公演予定、次回公演の隠し味などを伺うことにしている。それをちょっとずつ、観劇後のブログ執筆に生かしているのです。
posted by Kato at 14:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする