2013年04月28日

ロッスム万能ロボット会社(試演会)

 札幌座の第1回試演会「ロッスム万能ロボット会社」を4月27日(土)、札幌座稽古場(シアターZOOロビーとなりのスタジオ1)で見た。
 チェコの作家、劇作家カレル・チャペックの「ロボット」が原作で、演出はすがの公。8月にも試演会が行われ、本公演は11月。今回の試演会は3日間にわたって役柄を替えて行われ、私が見たのは最後の会。休憩10分×2回を含め、上演時間は3時間超。みんなが岩波文庫「ロボット」を手にしての芝居だった。
 私にはとりわけ、ロボット会社社長の妻を演じた高子未来が良かった。すでに感情を入れて表現している感じ。近年乗っている高子だが、もしかしたら芝居を届けたい相手が見つかったのかもしれないなと思った。それは必ずしも「彼氏」とか、具体的でなくてもよい。名前を知らない観客でもよい。ただ私が宛先のはっきりした手紙以外の文章を書くときに自然と思い描いているような、読んでくれるであろう誰かであってよいのだ。そういう存在を思い描き、意識しながらの文章には自ずと心が宿る。うまく書けるかどうかは別として。
 で、高子だが、そうした見てほしい存在ができたのじゃないかなあと思ったのだ。とてもいいことだと思う。ますます乗るだろう。
 芝居は哲学的な考察に富んでいて、とてもおもしろかった。
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2013年04月14日

戦場のピクニック 二人の女兵士と家族の肖像

 実験演劇集団「風蝕異人街」の「戦場のピクニック 二人の女兵士と家族の肖像」(原作フェルナンド・アラバール「戦場のピクニック」=初演1967年。チラシにはないが劇場配布のパンフレットにのみ原作として、こしばきこうが劇作でヒントを得たという「二人の女兵士の物語」を書いた劇作・演出家坂手洋二の名が連ねられている、構成・演出こしばきこう)を4月14日(日)、札幌・シアターZOOで見た。「戦場のピクニック」自体は何度も見たことがあるが、さすがは風蝕(というか、こしば)、一筋縄ではいかない。原作に忠実な公演にはなっていない。それはそれは斬新な風蝕版になっていた。
 銃弾が飛び交う戦場。兵士ザポ(田村嘉規、上村聡=原作ではたしか一人のはずだが)の元に、父親テパン氏(山谷義孝)、母親テパン夫人(丹羽希恵)、少女(山本美里)がピクニックにやってくる。ザポは敵の兵士ゼポ(平野たかし)を捕虜にする。かくして捕虜も交えてワインを飲み、ごちそうを食べる戦場のピクニックが始まる−。
 というところまでが、私が過去に見てきた原作通りの内容。
 その行楽を遠景に、舞台手前で「二人の女兵士の物語」が演じられる(私はこの芝居は見たことがない)。
 妊娠8カ月の女A(平澤朋美)を後ろ手に縛り、女1(三木美智代)が「反革命」の行動を取ったことに対する「総括」を迫っている場面だ。
 台詞の端々から、これは1972年に発覚した連合赤軍の雪深い山岳アジトでのリンチ事件であることがわかる。
 かくて、悠長な戦場のピクニックと、オウム真理教との心理的相似性をも指摘された連合赤軍の事件が二重写しになり、場面が往還する。
 何度も見た「戦場のピクニック」を風蝕がどう料理するのかが楽しみだったのだが、まさか連合赤軍を持ってくるとは。まったくもって意表を突かれた。
 上演時間60分。芝居は混沌のうちに幕を閉じた。ハッピーエンドではもちろんない。終演後、観客の多くはあっけにとられ、どう受け止めたらよいのかわからないといった空気が劇場内に漂っていた。実は私もその一人だ。でも、よくよく考えると、あながちミスマッチだとは言い切れないなとも思う。「戦場のピクニック」は不条理演劇として有名な作品である。それに拮抗する不条理な現実として、連合赤軍の一連の事件はあったのだ。
 私にはこの風蝕版「戦場のピクニック」は、容易に解の出ない、永遠に考え続けなければならない問いを突きつけられた気がした。ある意味できまじめで、刺激的な舞台だったと私なりに総括しよう。
 というところで、風蝕は7月には本来の姿に戻って(笑)、寺山修司没30年記念公演として「新版 青森県のせむし男」を上演の予定。おばかでエロでアナーキーなアングラ芝居を期待したい。
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2013年04月13日

サンキュウゴッド

 ハムプロジェクト全体興行2013「サンキュウゴッド」(脚本・演出すがの公)を3月17日(日)、札幌・コンカリーニョで見た。
 笹市(能登英輔)と木杉(立川佳吾)が中近東への出張から日本に帰国する飛行機が海上に墜落、乗客約20人が島に漂着した。日本人をはじめサウジアラビア、マレーシア、インド、フィリピン、韓国、中国と国際色豊か。ダーというイノシシが突然変異した生物がいる。木杉が何事にも積極的にリーダーシップを発揮し解決するのを横目に、笹市はご機嫌斜め。果たして彼らは無事にそれぞれの国に帰られるのだろうか−。
 休憩含め2時間半の大作。例によって開演前や休憩時間には売店を出すなど、見世物小屋の雰囲気が満載だ。
 劇作は各国人の特徴を日本人の視点から否定的にあげつらったり、島に住む人を「土人」と呼んだりなど、いわゆる差別的な台詞が頻出する。登場人物自ら「それって差別的じゃない?」などという台詞も出てくるほど。ただ、それらはすべてラストの大団円に向けてのものであり、確信犯的だ。
 小道具なども手作り感いっぱいで、まさに見世物小屋。テント芝居にも近いテイストだ。
 そうした中で綴られる物語はしかし、悪意のある差別とは対極にある。ラストはあっぱれといった感じで、祝祭的な様相を帯びた。
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彼女のスープレックス/鈴木14世×2

 北海道舞台塾シアターラボ札幌プレ公演を3月16日(土)、札幌市教育文化会館小ホールで見た。
 札幌の若手演劇関係者が道外で活躍する作・演出家(ドラマドクター)から2年間、指導を受け、劇作のスキルアップを図る企画。
 劇団アトリエ「彼女のスープレックス」(作・演出小佐部明広、ドラマドクター泊篤志=北九州・飛ぶ劇場)は人間相手のサラ金業を営む鬼たちの話。アフタートークで小佐部は危うい日中関係にヒントを得た旨を話した。上映時間70分ほどで、完成形に近い感じ。来年はどう深められるのだろう。
 intro「鈴木14世」(作・演出イトウワカナ、ドラマドクター柴幸男=東京・ままごと)は妻(菜摘あかね)が飼い始めたハムスター嫌さに家出した夫(大高一郎)が3カ月ぶりに帰宅すると、ハムスターが100匹以上に繁殖していたという20分ほどの短編。柴が潤色・演出したままごと版(妻=石橋亜希子、夫=大石将弘)も上演され、見比べられたのがとてもいい趣向。intro版では妻は蟹アレルギーだが、柴はそのエピソードをそっくり落とした。子どものいない夫婦がハムスターの父母になるというテーマ性などを考えた場合、エピソードとしては面白いのだが、テーマが拡散しかねない旨を話した。なるほど、劇作ってそういうものなのか、などと思った次第。
 両作品とも来年の本公演が楽しみだ。
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