2012年08月31日

あすから「北の映像ミュージアム」開館1周年記念映画会

 NPO法人北の映像ミュージアム(小檜山博理事長)は「北の映像ミュージアム」(札幌市中央区北1西12、さっぽろ芸術文化の館1階、小檜山博館長)の開館1周年(2011年9月17日オープン)を記念して、「シネマの風景フェスティバル2012」を9月1日(土)〜7日(金)に札幌プラザ2・5(中央区南2西5、旧札幌東宝プラザ)で開く。
 上映するのは、札幌ロケの「点と線」(1958年、85分、小林恒夫監督)と「ガメラ2 レギオン来襲」(96年、100分、金子修介監督)、十勝管内豊頃町、浦幌町などでロケした「日本女侠伝・真赤な度胸花」(70年、94分、降旗康男監督、藤純子、高倉健ほか出演)、小樽出身の小林正樹監督が留萌管内天塩町、宗谷管内猿払村などでロケした「人間の條件」(59〜61年、6部構成で計9時間31分を2部ずつ上映、仲代達矢、新珠三千代ほか出演)、帯広ロケの「雪に願うこと」(2005年、112分、根岸吉太郎監督、伊勢谷友介、佐藤浩市、小泉今日子ほか出演)の5作品。
 1日午後1時50分から留萌管内遠別町出身の映画評論家品田雄吉さんの「小林正樹監督と北海道」、同2時50分から根岸監督と映画プロデューサー田辺順子さんのゲストトークもある。
 映画鑑賞券は前売り・当日とも1本500円(「人間の條件」は1本で2部鑑賞可能)。なお「日本女侠伝〜」の5日(水)18時20分上映は都合により中止となった。
 上映日程・時間などの詳細は、北の映像ミュージアム(011・522・7670)か、札幌プラザ2・5(011・231・3388)へ。
 北の映像ミュージアムのHPは http://kitanoeizou.net/index.html
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2012年08月26日

「世紀の発明」×「昨日明日協議会」

 WATER33-39の短編作品2本立て「世紀の発明」×「昨日明日協議会」(いずれも作・演出清水友陽、上演時間各50分)を8月25日(土)、札幌・ATTICで見た。短編ならではのさくっとした切れの良い味わいを堪能した。
 「水の戯れ4」と銘打たれたシリーズ。作・演出岩松了で竹中直人、樋口可南子出演の「水の戯れ」とはむろん関係ない(私が道新ホールで見た芝居。北海道演劇財団製作)。
 このシリーズで清水はこれまで岸田國士の作品などを上演していた。それが今回、ほぼ新作と新作になったのは、今春、パリでウジェーヌ・イヨネスコの「授業」と「禿の女歌手」だけを2本立てでロングラン上演して(エンドレス?)満員の劇場で観客が拍手しながら大笑いしているのを見て、「『不条理演劇』でも実験的な作風でもいいんだ。じゃあ、札幌でもやってみよう」と思ったとのこと。その意気や良し。
 「世紀の発明」。清水企画当時の2000年初演「どらきら」改訂版。発明家の吸血鬼(佐井川淳子)の家に死神(高石有紀)が来る。吸血鬼は透明人間と結婚間近だが、1年以上も生き血を吸っておらず貧血気味。だから死期が近いのだ。ただ、丸玉を転がすと四方に渡された樋を永遠に回り続ける永久機関の発明が未完成で死にきれない。徐々に吸血鬼に同情し始める死神。“その日”はやって来るのか−。
 物語も演技も、演劇初心者にもとてもわかりやすい上に、あらすじよりは明るい芝居。私にはどうしようもないが、どこかをどうにかもうひと工夫凝らすと、良い意味で子どもたち向けの良質な児童演劇にならないだろうか(ちなみに私の児童書マイベストは浜田廣介の「泣いた赤鬼」。これには今でも芥川、直木賞受賞作よりも涙するんだからねえ)。清水は児童劇団の指導もしてるんだから、そうしたことも考えてもいいと思う。すてきな芝居だった。
 ラストシーン(あえて書かない)、清水に「3・11」があったから「希望」を書き加えたでしょ?と尋ねたら(初演は見ていない)、その通りだと答えた。あの災害は、こんな50分の作品にも影響を与えた。神よ、私はあなたを信じていない、信じていない者にこそ災厄を!
 「昨日明日協議会」。「私」の部屋にいる、あべ(中塚有里)。そこへ、「私」の部屋だとして来る、あべ(赤坂嘉謙)。ふたりは「『あいつ』を待っている。ここは私(俺)の部屋だ」と言い張る。部屋には億からの金が入った重たい紙袋がある。そこへ「いらっしゃいませ」と、第三者(奈良有希子)が来る−。
 大学時代に構内の演劇博物館で読みふけった日本の「不条理演劇」の第一人者・別役実をほうふつとさせた。会話の一つ一つが執拗なほどに念入りに緻密に組み立てられていて、「清水も別役を読み込んだんだなあ」と思い、わくわくわくわくした。ほんと、第三者が現れて物語が走り始めるあたりまでは(ここから先は清水ワールド)、別役本人が書いたと言っても疑われないほどに、会話のリズムが素晴らしく別役的に粘着質なのだ。学ぶことは真似ること、真似ることは学ぶこと。良いことだ。
 清水に聞くと「サミュエル・ベケット(代表作「ゴドーを待ちながら」)、イヨネスコがいて、それを踏まえて別役さんがいることが実感としてわかった」。君もその系譜だよ、きっと。
 北海道文化財団が「北海道立劇場」ができた暁のレパートリー化を目指した北海道演劇塾の劇作・演出家として取り組んだ企画では、少なくとも観客の7割方が満足できるいわゆる“エンターテインメント”は実現できなかったんじゃないか?(私見だけど)。でも、それでいいんだよ、良かったんだと思うよ、あれはあれで、経験として。。
 その後、清水は旧TPSで「クリスマス・キャロル」(原作ディケンズ)を作って、斎藤歩も果たせなかった札幌劇場祭大賞をもたらしたし、今年も、加入したTPS改め札幌座でディケンズの「デェヴィド・カッパフィールド」(原作ディケンズ。題名は1971年4月10日初版の角川文庫による)を、小説から芝居にするというじゃない。これは、見逃せない。
 というわけで、とてもすてきな50分×50分でした。
 千秋楽26日(日)は13時から「世紀の発明」、14時から「昨日明日協議会」(配役は私が見たのとは変わります)。1本だけ見ても2本でも1500円です。30人も入ればいっぱいのスペースで、もういっぱいいっぱいかもしれないけれど、より多くの人に見てほしいから、連絡先は090・6991・7043です。
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2012年08月23日

もしイタ〜もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら

 札幌市中学校文化連盟演劇専門委員会主催「5日間で作る『もしイタ』演劇ワークショップ発表公演」の「もしイタ〜もし高校野球の女子マネージャーが青森の『イタコ』を呼んだら」(作・講師畑澤聖悟)を8月20日(月)、札幌・ターミナルプラザことにパトスで見た。札幌市内中学校の男女生徒29人が5日間(5日目は公演だから実質4日間!!)で作り上げた笑いも交えた熱演に、今年も胸が強く打たれた。
 畑澤は青森市で公立高校美術科教諭の傍ら、劇団「渡辺源四郎商店」(通称なべげん)を主宰する実力派の劇作・演出家。高校演劇部顧問として従来型の「高校演劇」の枠を大きく逸脱したユニークな作風で、「修学旅行」、「河童」、そして今夏、このWS直前にこの「もしイタ」で全国高等学校演劇大会で3度の最優秀賞、ほかに3度の優秀賞を受賞している。
 中学生を対象にしたWSは昨夏までシアターZOOで3年連続3回(題材は「修学旅行」「河童」「親の顔が見たい」)行われていたが、今年はZOOが札幌演劇シーズンの会場ということもあり、場所を替えての開催。中学生ならではの新鮮な息吹に触れたくて、私は「河童」からは欠かさず見ている。
 「もしイタ」はご察しの通り、岩崎夏海著「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」のもじりだ。
 札幌のとある高校はへたくそ部員8人だけのナインにも満たない弱小野球部。前年夏の甲子園大会を目指す予選では1回戦で60−0で負け、すっかりやる気もない。見かねた元陸上部やり投げ選手の新入りマネージャー・ミワ(名前は生徒名をそのまま使っている)は、東日本大震災の被災地から4月に転校してきたコウヘイが前の高校で野球をしていたと知り、勧誘する。津波で家と母、野球部の仲間たちを流されたコウヘイは「自分だけが生き残って野球をするのは申し訳ない」と断る。だが、ミワは元やり投げ選手で最近亡くなった父のことを引き合いに出し、「できることはできるうちにやりなさいよ」と半ば強引に入部させる。
 けれども上手くなる妙案も試合に勝つあてもない。ミワは元からいたマネージャー・ユイに相談する。ユイが連れてきたのは彼女の青森出身の祖母でイタコであるヤマカワ。祖母は厳しい1カ月間の修行にただ一人参加するというコウヘイを連れ、謎の修行へ。帰ってきたコウヘイは、プロ野球草創期の伝説の名投手沢村栄治を自分に乗り移らせて剛速球を投げられるようになっていた。かくて弱小だった高校は夏の甲子園大会への予選をとんとんと勝ち上がり、とうとう決勝の日を迎える。だが、沢村は太平洋戦争の戦地で手榴弾を投げさせられ、肩が壊れてきていた−。
 出演者全員で夏の甲子園大会のテーマ曲「栄冠は君に輝く」を合唱して始まり、全員の同曲合唱で終わる芝居。舞台装置のない素舞台で、1時間の上演時間中、照明の変化もなければ音響機械も一切使われない。それを出演の生徒たち自身がカラスなどの動物を演じたり、全員で走ったり並んだり効果音を出したりして創意工夫して作り上げる。コウヘイやマネージャー、イタコの観察眼の鋭い演技も出色だが、29人みんなのアンサンブルがそろってこその素晴らしい出来栄えなのだ。
 畑澤本人には聞きそびれたのだが、一緒に見た畑澤芝居のウオッチャーによれば、この芝居はもともと青森の高校の演劇部員が被災地を巡演するために作ったのだそう。それゆえ照明も音響、舞台装置も一切いらない、部員の身一つとある程度の広い場所さえあれば上演できるようになっているのだ。実際、すでに10カ所程度を巡演して終えているらしい。そこに全国大会最優秀賞という“ご褒美”が飛び込んできたのだから、畑澤はじめ関係者はさぞうれしかろう。
 芝居は笑いどころ満載、心もほっこりだが、あの大震災以降、生き残った者はどうするべきか、なにができるのか−といった重い問いかけもはらむ。その問いかけへの畑澤自身のこの芝居での自問自答がまた泣かせる。コウヘイ以外の野球部員たちやマネージャーが亡くなった人を自分に乗り移らせることができるよう修行し終えていて、イタコとともに、ある人たちをコウヘイに出会わせるのだ(この文中に書いた人です)。
 私は思う。
 いまも、いつもどこかで私が会いたいのはあなたたち死者だ。
 いつどこでなにをしていようと、常に必ずあなたたちの存在がある。
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教文短編演劇祭2012・決勝のお詫びと訂正

 前項でイレブン☆ナインの決勝での獲得票数が119票とあるのは、199票の誤りでした。

 イレブン☆ナインをはじめ関係者、読者の皆さまにお詫びして訂正します。申し訳ありませんでした。
 イレブン☆ナインは2位以下の3カンパニーを合わせてもダブルスコアという、まさに他の追随を許さない圧勝でした。
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2012年08月20日

教文短編演劇祭2012・決勝

 教文短編演劇祭2012の決勝が8月19日(日)、札幌市教育文化会館小ホールで行われ、イレブン☆ナインが3連覇を果たした。
 決勝は愛知での劇王\優勝カンパニーであるオイスターズ(愛知)「音」(作・演出平塚直隆)40票、劇団アトリエ「ふつうに愛、」(作・演出小佐部明広)18票、TBGS「愛のテーマ」(作・演出ミヤザキカヅヒサ)27票、イレブン☆ナイン「架空のイキモノ」(作納谷真大、演出イレブン☆ナイン)119票と、圧倒的な大差での勝利。
 イレブン☆ナインが短編演劇の全国大会「劇王X〜天下統一大会」への出場権、齊藤雅彰教文演劇フェスティバル実行委員長の手作りチャンピオンベルト、2014年3月教文小ホールでの上演権、次回短編演劇祭の決勝シード権を獲得した。
 見た感じでは、イレブン☆ナインを倒すには、驚くほどのアイデアと相当な力量が要るでしょう。プロ野球・巨人のV9は超えるかも? 来年も楽しみです。お疲れさまでした。
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2012年08月19日

教文短編演劇祭2012予選

 教文短編演劇祭2012の予選を8月18日(土)、札幌市教育文化会館小ホールで見た。観客投票では予選Aブロックで劇団アトリエ、BブロックでTBGSがそれぞれ勝ち上がり、19日(日)14時からの決勝に進出する。
 Aブロックはオパンポン創造社(大阪)「ストラーイクッ」(作・演出野村侑志)40票、劇団アトリエ「ふつうに愛、」(作・演出小佐部明広)72票、Bee Hive「真猛者(マコトタケキモノ)」(作浦本英輝、演出Bee Hive)65票、劇団「風蝕異人街」「最後の夏」(作芝潤之介、演出こしばきこう)46票。
 BブロックはTBGS「愛のテーマ」(作・演出ミヤザキカヅヒサ)55票、パセリス(東京)「ゴッドブレス」(作・演出佐々木拓也)43票、大人の事情協議会「N」(作・演出長岡登美子)34票、words of hearts「さけびつづけるえれじい」(作・演出町田誠也)40票だった。
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瀕死の王さま(再観)

 札幌座「瀕死の王さま」(作ウジェーヌ・イヨネスコ、翻訳大久保輝臣、脚色・演出斎藤歩)を8月17日(金)、札幌・シアターZOOで再観した。第二王妃マリーが坂本祐以のバージョン。その坂本がすごくナチュラルな芝居で、1回目に見た宮田圭子の若づくり芝居がアングラを思わせたのに比べて全体的にシンプルな感じがした。
 終演後、すすきののとある酒場で飲んでいたら、なんと斎藤歩が一人でやって来た。演劇に対しての熱い思いを聞いた。それに比べると、いまの30代以下の冷めていること!! 独立独歩で道を切り開いてきた歩は北海道演劇界の財産だ。歩に全身でぶつかって、吸収してほしいと思う。
 「札幌演劇シーズン2012夏」3作品の上演時間など詳しい日程はホームページ http://s-e-season.com/ をご参照ください。万が一、計画停電になってしまった場合の対応なども記されています。
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2012年08月15日

ごちそうさまでした

 教文演劇フェスティバル実行委員会プロデュース(聞いたところによると、そうらしい)「ごちそうさまでした」(脚本・演出竹原圭一、能登屋駿介)を8月15日(水)、札幌市教育文化会館小ホールで見た。教文演劇フェスティバル2012小ホール公演だ。
 作曲家を夢みる錬二(能登屋)とカナダから日本に来たリンダ(アイシス)のバカップルがいる。一方、人気脚本・演出家(白鳥雄介)は料理漫画家(井口浩幸)の漫画が原作のミュージカル公演を前に、占い師に「不幸をもたらす女がやって来る」と言われ、うろたえる。はたして不幸をもたらす女とは、舞台の幕は無事開くのか−という人生交錯もの。
 役者たち一人一人は頑張っていたと思う。ただ「頑張っていた」としか言えない。それ以外に感慨がなにも湧いてこない。
 いや、違う。むしろ痛切に感じたのは、教文演フェス実行委が太鼓判を押した作品(少なくとも劇作者や演出者、役者を誰にするかを決めるなりしたのだろうから)がこの程度の現状では、教文小ホール公演の敷居が信じられないほどずいぶん低くなってしまったなあということ。演劇を実践している若者たちには朗報かもしれないが、教文演フェスを10年間見続け、時に関わってきた私としては複雑な心境になった。
 SKグループ(現ハムプロジェクト)、劇団千年王國、シアターユニット・ヒステリックエンド(現弦巻楽団)、yhs、intro…。教文小ホール公演は若手カンパニーの登竜門だったし、これからもそうであってほしいと願う(もちろん、老舗カンパニーならではの熟成された舞台発表の場でもある)。小ホール公演が初演の千年王國「SL」は改訂され東京でも上演されたし、弦巻楽団「果実」(9月にサンピアザ劇場で三たびの再演予定)など再演を重ねている名作もある。
 かつて私は実行委に請われて、教文小ホール公演の出演カンパニー推薦者を3年間務めた(計3人のうちの1人)。その時に基準として自らに言い聞かせていたのは、使用料などの問題でカンパニー自身の力だけでは望んでも到底実現できないだろう大舞台での公演に耐えうる実力を持っているか、少なくとも期待を抱かせるか、だった。つまり日ごろの活動実績から、この大舞台の特性を生かして、各地でさまざまなイベントが重なる夏真っ盛りにわざわざ見に来るお客さまたちを満足させられるだろうかということ。もっと簡単に言えば、十分には満足させられないまでも、私なりに抱いていた小ホール公演のイメージに見合うだろうかということ。それだけに推薦者の責任としてあちこちの劇場に足繁く通い、さまざまなカンパニーを見て回ったものだ。
 最近は小遣いが減らされたという家庭内事情もあって、旗揚げ間もない若手カンパニーの公演はほとんど補足できていない。それにしても今回の、教文演フェス実行委プロデュースらしいこの作品は、先に書いたような私の基準に照らすといかがなものかなと、結果としての出来栄えに大きな疑問符を付けざるを得ない。
 まったく勝手な私見だが、教文小ホール公演の方向性について教文演フェス実行委は、いま一度検討を重ねてもいいのではなかろうか。つまり、力は未知数の若手カンパニーに大舞台を踏んでもらい、飛躍のきっかけにしてもらうチャンスと捉えるか、あるいは演劇に馴染みのない人にも楽しんでもらえる、ある程度は実力のあるベテランカンパニーに場を提供するものなのか、それともできる限りその両方を兼ね備えたカンパニー(若手でも老舗でも)を探し出すか、頼み込むか−。
 私としては、先週、目下の若手有望劇団であるアトリエとパーソンズが提携公演を実現したことでもあり、ここらで3〜5年ほど小休止してしまってカンパニー探しをしてもいいのではないかと思うのだが。
 観劇専従者としては週末の短編演劇祭に期待しよう。というか、教文演フェス自体が、小ホール公演より短編演劇祭に軸足が移っているように思える。
 教文演劇フェスティバル2012についてはホームページ http://kyobun-enfes.com/ をご参照ください。
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2012年08月10日

瀕死の王さま

 札幌座「瀕死の王さま」(作ウジェーヌ・イヨネスコ、翻訳大久保輝臣、脚色・演出斎藤歩)を8月9日(木)、札幌・シアターZOOで見た。TPS時代の2009年7月初演以来の再演となる「不条理演劇」だ(初演劇評をご参照ください)。
 見る前は正直、上演時間2時間のこの演目が「札幌演劇シーズン」にふさわしいのだろうかといぶかっていた。上演時間が長いだけではなく、死を宣告された王さまが死ぬまでの様子を描いた内容も含めてだ。だが、それは私の杞憂にすぎなかった。斎藤は今回、なんと1時間20分にまで縮めた上、不条理演劇を超えて正々堂々、笑いどころ満載、“暴走”“暴発”気味のコミカルなアングラ演劇に仕立てたのである!!
 ある衰退した国の王さま(斎藤)が死を宣告される。それは好き勝手をしてきた王さまの運命にも、いまや愛されてはいない第一王妃マルグリット(橋口幸絵。とにかくはまり役!!)が医者(弦巻啓太)と仕組んだ奸計にも見える。王さまは愛する第二王妃マリー(宮田圭子。Wキャストで坂本祐以も)やお付きのジュリエット(高子未来)、衛兵(佐藤健一)の助けを借りてなんとか死を逃れようとするが、どうにもならない。この単純と言えば言える物語が、斎藤がパンフレットに書いているように、個人と国家を深く考えさせるのだ。
 と、初演はまさにその通りだったのだが、今回はそれを踏まえた上で、とにかくスパークしている。これがあのTPS改め札幌座か!?と思うほどに“暴走”“暴発”している。動きがこれでもかというほど先鋭化して、台詞には「ツイッター」などの現代用語も取り込まれ、名作古典を今に生かしている。“暴走”“暴発”とラストの静謐さの対照の見事さ。斎藤の大胆な冒険的構成が功を奏して、テーマをより深く鋭く浮き彫りにしているのだ。
 私には、初演より断然良かった。「初演を見たから今回はいいや」と思っている人がいるかもしれないが、ぜひ見てみてほしい。初演とはまったく別物になっている。私の30年近い観劇人生の中でも、初演と再演でこれほどがらりと印象、だけでなく本当に構成が変わり、より面白く楽しめた芝居はそうない。いや、斎藤のこの冒険的脚色・演出は、むしろ「札幌演劇シーズン」というロングランだからこそ試みた、野心的な挑戦かもしれない。それが実に見事にはまった。素晴らしい出来栄えだった。
 「札幌演劇シーズン2012夏」3作品の上演時間など詳しい日程はホームページ http://s-e-season.com/ をご参照ください。万が一、計画停電になってしまった場合の対応なども記されています。
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2012年08月09日

ぼやけた世界で深呼吸。

 劇団アトリエ×劇団パーソンズ提携「ぼやけた世界で深呼吸。」(作・演出畠山由貴=パーソンズ代表)を8月8日(水)、札幌市教育文化会館小ホールで見た。札幌の若手有望劇団の共演という、教文演劇フェスティバル2012小ホール公演ならではの斬新な良い企画だ。
 和樹(有田哲)は中学3年生。2012年の夏休み、母方の祖母菊乃(柴田知佳)が亡くなり、葬儀のため(シングルマザーらしい)母早苗(阿部星来)と母の実家に初めてやって来た。北海道の田舎の農家である実家には、伯父夫婦(晋介=小山佳祐、亜季=能登屋南奈)と娘で和樹と同学年のちづる(小池瑠莉)、祖父優作(小佐部明広=アトリエ代表)がいる。優作は自分の妻が死んだこともわからないほど惚けている。
 葬儀で来たのに母からは勉強するように言われる和樹。納屋で勉強していると、赤い浴衣を着た正体不明の幼女たま(工藤舞子)が現れ、遊ぼうと誘われる。不思議なことに、彼女は和樹にだけは見えるらしい。
 そうするうち、たまは1990年の夏のこの家での出来事に和樹を誘う。現在と、夢としての22年前の過去を自由に往還する2人。そこにはまだ親になっていない晋介、早苗の兄妹と若い優作、菊乃がいた。ある日、スナック勤めの詠子(宮崎安津乃)がこの家を訪ねてくる。妊娠3カ月で、父親は優作だという。優作は事実だと認め、出産まで詠子をこの家に居候させてほしいと家族に提案する。晋介、早苗の兄妹は強硬に反対するが、菊乃は認める。そして奇妙な同居生活が始まる。謎の無垢な幼女たまの正体とは−。
 状況設定としてはタイムスリップものだが、1990年を訪れることをたまが「夢」という言葉で表現しているのがミソ。物語としては複雑で重苦しい出来事、しがらみが全体を覆う内容だが、題名に象徴的に見られるように淡々と、むしろ軽いとさえ思われる感じで進められる。
 上映時間90分。欲を言えば、もう少し時間をかけてでも、慈悲深い菊乃の人生と、たまの思いをより深く掘り下げてほしかった。さらに言えば、ポイントとなる早苗と優作の思いをもだ。登場人物全員に均等に目配りしているのはわかるのだが、結果的に淡彩な印象になってしまって物語が収斂していかず、こうした重苦しい設定ならばきっと残るはずの見終えた後のしこり、澱といったものが薄かった(演出の意図として、和樹の視点を尊重しているから重苦しくしたくなかったのならば別だが)。ラストも急ぎ足で前向きさをまとめた感じで、余韻がさして続かなかった。
 ちょっと厳しいことを書いたが、よりうまくすれば若手劇団らしからぬ人生観照の素晴らしいものになるに違いないと断言できる作品だからである。練り上げていつか再演されることを期待する。
 9日(木)は19時開演。
 教文演劇フェスティバル2012についてはホームページ http://kyobun-enfes.com/ をご参照ください。
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2012年08月04日

歯並びのきれいな女の子

 コンカリーニョプロデュース「歯並びのきれいな女の子」(作・演出イトウワカナ、監修泊篤志=北九州・飛ぶ劇場)を8月3日(金)、札幌・コンカリーニョで見た。2009年2月に泊が講師を務めた戯曲講座の成果発表リーディング公演、10年5月に実演版が泊の演出で上演された作品だ。
 真夏、山中家の居間。飴工場を営んでいた父親の納骨の日。遺言書の開封のために家族が集まった。長女まいこ(福地美乃)は子どものころから父親の作った飴を食べ続けたせいで歯並びが悪く、歯科医の婚約者光男(小林エレキ)からは矯正を勧められている。遺言を託された、いとこで司法書士の大輔(かとうしゅうや)の到着を待つところへ、歯並びのきれいな女の子さおり(佐藤愛梨)が現れる。見知らぬ彼女は、父の娘だという−。死後に現れた父親の大きすぎる秘密に、驚きうろたえ苦悩しながらも、やがて許していく、誰の隣にもあるような、ある家族の物語。
 他の出演は、まいこの母みずえ(佐藤亜紀子)、弟しんじ(上西佑樹)、あめ工場のベテラン工員吉田(宮沢りえ蔵)、彼の息子優作(赤沼政文)。
 実演版初演は舞台を中央に配置し、観客席はコの字型に三方に設えられていたが、今回は舞台部分がよりゆったりと広くなり、観客席はハの字型に二方。玄関や、向こうに畳の間があることを思わせる障子戸、簡素な仏壇、2階のしんじの部屋まである豪華な舞台美術がまず目を引いた(足立高視)。
 芝居は2年前に見たばかりとは思えないほど、私の目には新鮮に映った。それはキャスティングがばっちりはまっていたのと、動と静のメリハリがよく効いた演出のせいだったろうと思われる。特に動の部分の弾け方が痛快。さおりに娘としてのあり方、家族としてのあり方を語って聞かせる美乃にしても、心のどこかに自分の歯科医院開業への思惑(ありていに言えば遺産相続)があるのではと見受けられるエレキにしても。実演版初演の泊演出はシリアスさを前面に出していた印象が残っているが、今回のワカナ演出ではコメディー的要素も随所に散りばめられていた。それだけにラスト、夫から三通目の“遺言書”を送られた佐藤の抑制された静の演技がいっそう渋く引き締まり、心に響いてきた。
 7月24日(火)の札幌座「アンダンテ・カンタービレ」公演後のアフタートーク(シアターZOO)で斎藤歩に尋ねられ、ワカナは「(芝居で)パンクがしたい」と話していたのが印象深かったが、今回の作品など、その端緒ではなかろうか。
 ワカナのテーマ「家族」は、解体にしても再構築にしても、今後もさまざまな意匠が凝らされていくだろうし、とても楽しみ。それにワカナは「男性」「女性」という性差も、もう一つのテーマとして抱いているんだろうな、と想像される。
 「札幌演劇シーズン2012夏」3作品の上演時間など詳しい日程はホームページ http://s-e-season.com/ をご参照ください。万が一、計画停電になってしまった場合の対応なども記されています。
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