2009年02月23日

歯ならびのきれいな女の子

 前項に続いてリーディング公演である。今回は、コンカリーニョ戯曲講座成果発表リーディング公演「歯ならびのきれいな女の子」(2月22日、札幌・コンカリ)。札幌のイトウワカナ(intro)の作で、講座の講師を務めた北九州の「飛ぶ劇場」の泊篤志が演出した。
 飴工場の社長が死んだ初七日。母みずえ(古崎瑛美)や長女まいこ(福地美乃)、長男しんじ(かとうしゅうや)ら家族や工場従業員らが集まっている中、「私も娘です」という歯ならびのきれいな女の子(知北梨沙)が現れたことから騒動が巻き起こるほのぼのコメディー。
 戯曲講座はコンカリが2008年7月から月1回の計7回実施したという。受講生と作品はほかに弦巻啓太(弦巻楽団)「茶の間は血まみれ」、南参(yhs)「予備の国」、かとうしゅうや(フルブリーチ)「ラ・マヒストラルはやめて」の3人3作品があり、その中からワカナの作品が上演用に選ばれた(他の3作品もポストパフォーマンストークの中で少しだけリーディングされた)。
 ワカナが書いた戯曲は、いかにも女性らしく繊細で、かつ見終えた後に心がじんわり温かくなる物語だった。戯曲を書いた経験は4人の中でも浅い方だろうに、なかなかの出来映えと見た。
 ところで今回、役者たちがそれなりの衣装(喪服)を着て、ト書きも丹念に読まれるこの作品を見て、前項の「ぐるぐる地獄」はそう言えばト書きがほとんど読まれなかったな、ということにあらためて気づいた。役者たちの動きでそれを補っていたのである。「ぐるぐる地獄」のリーディング公演としての「自足性」というか「完結度」ということは、実はそんなところにもあったのかと思い至った次第。
 「歯ならびのきれいな女の子」はコンカリプロデュースでの上演を模索中という。ぜひ実現してほしい。楽しみに待っていることにしよう。
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2009年02月21日

ぐるぐる地獄

 北海道舞台塾(先進的創造活動の推進)の演劇リーディング公演「ぐるぐる地獄」は2月14日、札幌・かでる2・7で。脚本・演出は富良野塾出身で、イレブン☆ナイン主宰の納谷真大だ。
 27歳のOL(今井香織)は、3年越しの恋人から突然メールで別れを切り出され、仕事で失敗。上司(斉藤雅彰)に怒られる。上司は35歳の医師(松山ジョー。)に不摂生を怒られる。医師は42歳の妻(林千賀子)に怒られる。妻は27歳の自動車教習所教官(高田豊)に運転技術の未熟を半ば呆れられる。教官は実は冒頭に出た「恋人」で、安易によりを戻そうとしてOLに怒られる。こうした怒りの連鎖を描いた「叱責コメディー」。
 出演者は皆、黒ずくめの衣装で、台本を手に、または小道具に、舞台狭しと駆け回る趣向の納谷流リーディング公演。椅子も重要な小道具の一つとして、さまざまな種類のものが出たり入ったりする。各場面の合間合間に、小島達子が狂言回しのハムスター役(ハムスターが映像で登場する)で朗読したり、各場面の脇役でちらりちらりと登場する。
 率直に、私は面白かった。北海道舞台塾の公演で、素直に面白かったと言えるのは初めてじゃなかろうか。
 何よりセットなしの素舞台で、役者の肉体が躍動するのが見ていて爽快だった。藤本章子(ダンススタジオマインド)の振り付けが、井手茂太(イデビアン・クルー)のダンスを思わせて軽やかで楽しい。舞台の面白さは、「リーディング公演」と言いながらも、この役者たちの躍動感によるところが大きい。
 この公演は、1年目リーディング、2年目試演会、3年目本公演で行われるはずだが、1年目でここまでとんがったところがない感じに「完結」していて、あとは大丈夫なのだろうかと思えてくる。それだけ、この「何もなさ」が素敵だ。今後へたにいろいろな細工をすると、この「何もなさ」から立ち現れる舞台の原初的な面白さが失われるのではなかろうか、と心配してしまう。
 惜しむらくは、全体の通奏低音として、ちょっと説経くさい。メッセージは舞台を見るだけで、「そこ」までのセリフを聞くだけで、十分に観客に伝わっていると思う。舞台上を縦横無尽に駆け巡った役者の肉体同様に、もっと軽やかに、誤解を恐れずに言えば「無責任に」舞台を楽しんでもいいのではないか。
 北海道舞台塾で、私としては初めて、「レパートリー」になりそうな演目に出会って、素直にうれしさがこみ上げた。
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2009年02月18日

ジャパニーズ・ブラックジョーク

 いきなりだが、ジャパニーズ・ブラックジョークを思いついた。
記者団「中川財務相、本当にお酒は飲んでなかったんですか」
中川財務相、ある記者の持っていたペットボトルの水を奪い取って飲むと、うつろな表情で「いいえ、大麻はやってません」
昨日か、一昨日ならもっとインパクトがあったかな。
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2009年02月13日

アイドゥーアイドゥー

 昨年の「ザッツザット〜これでおしまい〜」をもって、活動休止に入った札幌の劇団SKグループ。それが、その作品で日本演出者協会主催の若手演出家コンクール2008で、団長すがの公が優秀賞を取ったということで、東京での最終決戦(3月)を前に札幌前哨戦と銘打った公演を行った。脚本・演出・出演すがのの「アイドゥーアイドゥー」(2月11日、札幌・シアターZOO)だ。
 ある家の屋根裏。耳が聞こえず白痴と思われている弟(彦素由幸)は毎日飽くことなく絵を描いている。兄(すがの)は乱暴者だが、1カ月ほど前から出入りしている娼婦(小山めぐみ)に惚れられ、貢がせている。兄と幼なじみの医者(能登英輔)は娼婦に、弟の右耳の裏の血だまりを取れば、右耳は聞こえるようになるという。弟が可愛くてしようがない娼婦はへそくりで手術代を出そうとする。
 ある時、医者の友人に、弟の絵が高く売れたことに味をしめた兄は、どんどんどんどん弟の絵を売り続ける。そんな折、医者は娼婦に、この兄弟にまつわる血の宿命(二人の父親も絵を売って生活していたが、頭はおかしい人物で、母が家を出た後に自殺したことなど)を告げるのだが…といったストーリー。
 屋根裏のセットが的確にできていて、なんだかテネシー・ウィリアムズか誰かの翻訳物を見ているような上々の雰囲気の芝居だった。もしかしたらSKGの作品としては私の中で上位の部類に入るかもしれない。
 劇中、すがのによる絵がスライドとして上映されるのだが、それも物語の進行に重要な要素を占めており、過不足なくうまい見せ方だ。暗闇を効果的に使ったのも、なかなかに雰囲気があった。
 上演時間1時間という制約(東京最終決戦用)、登場人物4人という引き締まりが、逆に適度な緊張感と、余分なものの少ない物語の高密度につながったのだとも言えよう。
 東京でもぜひ、ひと暴れして、(なんだか言語矛盾だが)その後の活動休止に花を添えてほしい。
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2009年02月10日

冬のバイエル(サンピアザ公演)

 2009年の年明けは1月4日、札幌・エルプラザでの「平成開進亭」(桂枝光ら出演)で始まった。新春初笑いとはいいものだ。
 さて、シアターホリック(演劇病)の幕開けは、札幌の劇団TPSの名作「冬のバイエル」(作・演出斎藤歩)からいこう。1月25日、札幌・サンピアザ劇場で。
 初演から8年、もう今回で4演目となるレパートリー作品だ。父(山野久治)と娘(伊佐治友美子、斎藤由衣のWキャスト)、夫(木村洋次)と妻(宮田圭子)、兄(斎藤)と妹(林千賀子)の3組が登場人物。
 以下、チラシなどによると、母の形見であるピアノの処分で対立する父と娘、子供の問題ですれ違ってゆく妻と夫、奔放に生きる兄とそれを見守る妹。
 冬の札幌を舞台に、1台のピアノを取り巻く様々な風景がゆっくりと絡み合い、やがて繋がってゆくオムニバスストーリー。
 これを見るのは、もう何回目になるだろう。10回にもなるのではないか。それでもそのたびに新鮮で、静かな落ち着いた気持ちになれて、今まで気が付かなかった、気が付きようもなかった発見らしきものもあるのが不思議な、味わい深い作品だ。
 あえて物語の内実を白日の下にさらけ出すようなことはせず、じわじわと物語の渦の中に観客を巻き込んで想像力(創造力)を促す斎藤の作劇、そして淡いとも思える人間関係のひだをひたひたと感じ取らせて表現してゆく、今につながる作風、手法は、まさにこの1作で完成を見たと言って良い。
 その意味ではこの作品は、TPSの記念碑的作品である。
 今回が初出演の木村が演じた夫は、登場人物6人の中でも「動」を感じさせ、観客が想像するしかないある行為をも行う役回りだが、「秋のソナチネ」の舞台回し的狂言の役割から一転、静かに「感じさせる芝居」も十分こなせることを本作で証明した。
 私が見た回の娘役は斎藤由衣だったが、はつらつとした若さとともに、父を思いやる娘のけなげな姿をも体現してみせた。
 まさに「名作」の名に恥じない公演だった。TPSは今秋には本作で、ハンガリー、ルーマニアにも公演旅行をするという。言葉に、そして動作にも頼りすぎない作劇は、欧州の異文化の人たちにも十分理解され、感動を与えるに違いない。
posted by Kato at 20:19| Comment(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする