今年の観劇本数は145本。2007年より20本増え、2年ぶりに140本台に乗った。
マイベストは2本。
1本目は劇団TPS(札幌)の「春の夜想曲(ノクターン)〜菖蒲池の団欒〜」(作・演出斎藤歩)。これは、何と言っても、客演女優金沢碧(TVドラマ「俺たちの旅」などで有名)の燕尾服姿の凛とした立ち姿、佇まいの美しさに尽きる。もちろん物語としても、叔母と姪との生と死をめぐるやり取りに見応えがあった。
2本目は劇団イナダ組(札幌)の「Sui Site(スーサイト)〜実体の無い透明な犬と彼女」(作・演出イナダ)。一つの舞台を幾つもの場所に見せる見せ方が実に巧みだった。全体に芝居のトーンとしては暗いが、ラストシーンに現代の閉塞した状況からの旅立ちを滲ませたのも良かった。
道外カンパニーの道内公演賞は激戦であったが、昨年に引き続き、劇団FICTION(東京)とした。受賞作「しんせかい」(作・演出山下澄人)は、昨年の「石のうら」(同)よりはインパクトに欠けるが、どうやら私もこの劇団の「最下層の世界」の妖しげな魅力に取り込まれつつあるようである。
そして今回から再演作品を対象に、「殿堂入り」という賞を設けた。これは過去にマイベストになったものも、ならなかったものでも再演としてマイベストに比肩する作品ということである。
これも2本ある。
1本目は劇団北芸(釧路)の「棲家」(作太田省吾、演出加藤直樹)。2007年のマイベスト受賞作である。老境の男の夢とも幻ともつかぬ物語を、故中村伸郎へのあて書きながら、加藤が見事に体現していた。
もう1本は劇団yhs(札幌)の「95(キュー・ゴー)」(脚本・演出南参)。これも実は2005年のマイベスト受賞作である。1995年という、いまではもう遠くなってしまった、だが当事者には忘れることのできない、阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件という大災害、大事件を背景に、若者たちの「青春」への挽歌を描き切って見事だった。
さて2009年はどんな年になるのだろうか。解散・総選挙の見通しもつかぬまま、社会的にも閉塞感が増していくのだろうか。どうか、そうした閉塞状況を打破するような芝居を期待したい。
来年もよろしくお願いいたします。