2008年08月27日

千年ZOO

前項のAND「もっともったいぶって」で、吉田奈穂子のキレた時のすごさ(もちろん役柄の上でですが)に言及するのを忘れた。
 私は彼女がTPSの「さよなら日曜日」(作・演出北川徹)に客演した時から、意識して見てきたのだが、ANDの中でもどちらかといえば静かな、端正な佇まいを宿した女性だと思っていた。
 それが今作ではぶっとびー。パワー炸裂の姿は一見の価値がある。シアターZOOでどうぞご覧ください。
 さて、劇団千年王國が24日、札幌・円山動物園(こちらは本物のZOO)野外ステージで野外劇を上演した。題して、劇団千年王國プレゼンツ ミニミニアニマルシアター「千年ZOO〜うさぎの起こり/家出した犬」(作・演出橋口幸絵)。
 「カムイ・ユカラ」をモチーフに橋口がつくった物語は各10分ほどで、出演は村上水緒、佐藤素子、赤沼政文、楽器演奏は榮田佳子。。当日は強風にもかかわらず100人近くの親子連れが集まったのではないだろうか。
 私は少し前に行って稽古から見ていたのだが、その時はものすごい強風で、橋口が「風を味方につけて」と叫んでいたのが印象的だった。
 上演開始になると、風は不思議と弱まり、子どもたちの歓声が軽やかで気持ちよかった。
 今回の企画、とあるところで動物園の職員と知り合った劇団員が持ち込んだのだという。
 演劇を上演する空間は、アイデアによってはどこでもあるんだね。
 それで思い出したが、5年ほど前、東京の「KAKUTA」という劇団が浅草の遊園地「花やしき」で上演した芝居を見たことがある。
 観客は、ステージのところ、ボートのところ、メリーゴーラウンドのところといった具合に6カ所ほどに分かれ、6つの物語に分かれた劇団員が最初はここ、次はそこ、その次はあそこと、上演場所を変えていく仕組み。観客は座った場所によってAという物語からB、C、D、E、Fと見るか、FからB、D、A、E、Cと見るか、バラバラなのだが、最終的に、遊園地の周りを一周するジェットコースターが各物語のラストを締めくくるという実に巧みな構成だった。
 札幌の劇団も、そうした試みに挑戦してくれないかなあ。
posted by Kato at 18:30| Comment(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

もっともったいぶって

「ZOO8」から、ANDの「もっともったいぶって people who grudge it」(脚本・演出山田マサル)も23日に観劇。
 薬物中毒で対人恐怖症の警察官(三浦徹也)。覚醒剤中毒で対人恐怖症セミナーの女性講師(吉田奈穂子)。彼らに大金を貸し付けている男(亀井健)。男は女(富樫真衣)を監禁してもいる。男の父親(ツルオカ)は知事で、国政へ打って出ることを検討中。ここで男は、どことなく映画「タクシードライバー」を思い出させるある計画を進める、といった内容。
 芝居は細かないくつもの断片から成り立っているが、全体を通して見ると、現代日本のある断面を切り取っているのが分かる。それは見ていて腹立たしい恥部の縮図だ。その意味でとても批評的な芝居だとも言える。
 ANDにしては、エロやグロは描写されるけれども、かつてなく物語が分かりやすい。だからコアなANDファンには少々物足りないかも(笑)。でも前述した社会の批評はとてもまっとうだった。どうしたAND、健康的じゃないか。そう心配にもなってくるが、たまにはいいよね、こういう健康さも。
posted by Kato at 17:59| Comment(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

キス、したい。

 札幌で「シアターZOO演劇祭『ZOO8(ズーエイト)』が8月19日から31日までの日程で開かれている。
 初回の昨年は5カンパニーの参加で1カ月余に渡って開かれたのに対し、今年は7カンパニーの参加で2週間の短期集中型。それだけに芝居と芝居の間の休憩時間での仕込みなど、準備は大変だ。
 昨年は3000円で5カンパニーを何度も見られる方式だったが、今回は7カンパニーの前売り合計1万円で、所定の4カンパニーと残り3つのうち1カンパニーを見てスタンプを集めれば5000円がキャッシュバックされる仕組み。いろいろと試行錯誤している最中なのだろう。ちなみにZOO8のプロデューサーはSKグループ団長のすがの公。
 で、劇団RUSH!(本当は1マスに!が二つ入る)の「キス、したい。〜Prayer for mother〜」(脚本・演出明逸人)を23日に観劇した。
 舞台は札幌にあるカフェバー「帰りたい、帰れない…」。左足を怪我しながら、いま開催中の祭りで御輿を担ぐことに執着する葛城という男性客(野々川彰人)が入り浸っている。ここのマスターは岳緒(明)という女装のオカマで、元妻メイ子(山崎未樹)によれば、「子どもができた」と打ち明けた時から女装を始めたらしい。岳緒には腹違いの妹愛美(藤田真代)がいる。
 ここに、東京から岳緒あての手紙を持って来たといって門脇という男(男鎌田真吾)が現れたことから、さざ波が起きる、といったストーリー。
 独特の「雰囲気」を持った物語だ。大きな事件は起きない代わりに、登場人物の心情の小さな変化を楽しむというか、そんな感じ。例えば、亡き母にかつて「キス、したい。」といわれて素直に従えなかった岳緒の微妙な心のひだ、母と子の感情の行き違いだとかを、だ。
 ただ、葛城の御輿への執着が異様なまでで、本筋と絡んでくるかとも思ったが、そうではなかった。だとしたら、ちょっとこのエピソードは引っ張りすぎの感もある。
 全体に間延びした感じもあって、10分ほど刈り込んだら、もっと緊密感が増すのではないかとも思われた。
posted by Kato at 17:43| Comment(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月14日

Sui Site(スーサイト)〜実体の無い透明な犬と彼女

さぼり月間だった6月最後の芝居は、劇団イナダ組「Sui Site(スーサイト)〜実体の無い透明な犬と彼女」(作・演出イナダ)。6月21日に、札幌・コンカリーニョで見た。ここ数年のイナダ組では出色な出来だったと言ってよいだろう。
 あらすじは、PRはがきによると、とあるサイトのオフ会に集まった5人(マキ=高田豊、カフカ=佐藤慶太、ゼルダ=小島達子、ジャンプ=武田晋、みさき=宮田碧)。彼らはある事を決行するために道具を買い揃え、昔ラブホテルだった廃屋に向かう。その廃屋では金に困った夫婦(納谷真大、山村素絵)が強盗をしようと計画を練っていた。時を同じく、ある男(安藤=江田由紀浩)の前から突然彼女(みさき=宮田碧)が消えた。男は彼女を捜し始める。学校や家を訪ねるうちに、彼女が姿を消したその理由を知る。そして男もまたその廃屋へ−。3つの話が交錯する中、真実の幸せとは何かを問うイナダ風サスペンスコメディー。
 題名のスーサイトとは英語のSuicide(スーサイド、自殺)からの巧みな造語だろう。そう、5人のある事とは、ホームページの自殺サイトで集まっての集団自殺なのだ。しかも硫化水素を使っての自殺。この作品は、イナダの社会的な問題意識を実に端的に表していると言ってよい。
 一方で、ある男=安藤というのは、実体の無い、首輪だけの犬を散歩させている男で、これも昨今の社会から逃避した人間像を代表させていると言ってよいだろう。物語は安藤とみさきを軸に進むが、3つの物語の輪郭が、同じ舞台上でありながらそれぞれ巧み、かつ効果的に造形されており、見る者が戸惑うことはない。このあたりり、イナダ演出の面目躍如たるところだ。
 テーマは重く暗いが、随所に笑わせどころもあり、観客を飽きさせず、アップテンポでぐいぐい持っていくあたりはさすがだ。
 ラストも一見、救いがないように思える。だが、安藤が犬のいない首輪をラブホテル跡の廃屋に置いた時、一筋の光明が差し込んだかに思える。一人の人間が新たな一歩を踏み出そうとしたのだ。
 後日、円山での夏祭り会場で偶然イナダに会ってビールを飲んだところ(笑)、「加藤さんが前に、簡単な解決策のない芝居を見たいといっていたから、それを意識して書いた」と言っていた。なんともありがたいことだ。実際、この作品は私の中で、イナダ組の作品の中でも上位の意欲作となった。
posted by Kato at 09:30| Comment(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする