2007年12月31日

2007アワード

 2007年が暮れようとしている。
 今年は、1月7日の国際曲劇団「ストップ薬、自死、エイズ」(札幌・かでる2・7ホール)から12月25日の作A・R・ガーニー、訳・演出青井陽治、出演佐々木蔵之介・中嶋朋子のリーディングドラマ「ラヴ・レターズ」(札幌・道新ホール)まで125本の観劇だった。
 昨年より21本も少ない。これは6月に引っ越しを控えて、観劇を控えざるを得なかったことが大きいだろう。そのほかにも、本当は良くないことなのだけれど、「これは見てもしようがないかも」というカンパニー、公演は最初から見るつもりがしなかったこともある。
 ともかく21本減というのは我ながら悲しい。でも来年以降もこの減少傾向は続くだろう。
 さて、2007アワードである。
 いきなりだが、マイベストは2月に釧路のジャズ喫茶「ジスイズ」の2階「アートスペース」で見た太田省吾作、加藤直樹演出、劇団北芸(釧路)「棲家」だ。
 凍て付く故郷まで行って見た感動が、年の終わりまで残り続けた。
 故中村伸郎(小樽出身)への当て書きの、老境にある男性と亡き妻の生と死の物語であるが、北芸の過去の芝居を見て、「北海道でやれるのはここしかないだろう」と戯曲をコピーして送っただけのことはあった。素晴らしい間合いの芝居に、ただただ感動した。
 実は劇団北芸の「棲家」は来たる08年4月、札幌公演(シアターZOO)をする。
ぜひともこの機会に、なんとか都合をつけて数多くの方に見ていただきたい。
 今年のマイベストは実はもう1つある。
 11月にシアターZOOで見たTPS(札幌)の「西線11条のアリア」(作・演出斎藤歩)だ。
 斎藤歩版「銀河鉄道の夜」といった趣の、これも生と死を想像力豊かに描いた叙情的な芝居。見ていて心が温まった。
 これは「シアターホリック(演劇病)」の執筆2回目に高く評価していたものだったが、その年のマイベストでは次点となっていたものだ。
 それが、約2年の期間を経て、味わい深く熟成していた。演劇の熟成というものを、肌で感じた素晴らしい体験だった。何年後かに、また上演してほしい作品だ。
 道外カンパニーの道内公演賞は、kokami@Networkの「僕たちの好きだった革命」(作・演出鴻上尚史)、東京乾電池の「小さな家と5人の紳士」(作別役実、演出柄本明)、劇団「飛ぶ劇場」(北九州市)の「あーさんと動物の話」(作・演出泊篤志)、原作フランツ・カフカ、構成・演出松本修(札幌出身)の「失踪者」など候補が数多くあった。
 だが、あえてここは劇団FICTION(東京)の「石のうら」(作・演出山下澄人、9月、シアターZOO)に贈りたい。
 社会の最底辺にいる人たち、また「変態」とか「障害者」とか、格差社会の中で疎外されている人たちを描きつつ、最後に見る者の中で大逆転を生じさせる物語は、まさに怪作であり快作だった。
 今度このカンパニーが来たらDVDを買おう。これで「買い作」にもなる(下手なしゃれ)。
 最後に、特別賞を劇作・演出家の故太田省吾氏に贈りたい。
 2月の「棲家」観劇、7月の氏の死去、9月、東京での献花・お別れ会出席、さらに12月に東京で見た構成・演出松本修の「失踪者」「審判」のカフカ2作交互上演のパンフレットで、松本自身が、カフカ作品への取り組みは太田氏の示唆がきっかけだったことを書いているのを読んだにつけ、今年の私の観劇は太田氏とどこかでつながっている気がするのだ。
 氏の冥福をあらためて祈りたい。
 さて、2007年ももう10時間ほどで終わる。来年が皆さんにとって幸多き年となることを願いつつ、今年の筆をおく。
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2007年12月20日

失踪者

 12月7日から3日間、東京で芝居を見てきたことはすでに書いた。4作品だが、フ
ランツ・カフカ原作の2作品交互上演「失踪者」「審判」(構成・演出松本修)、野
地図「キル」(作・演出野田秀樹)、鴻上尚史主宰の「虚構の劇団」旗揚げ準備公
演「監視カメラが忘れたアリア」である。
 今日は21、22日に札幌市教育文化会館でも上演する「失踪者」について少し書こ
う。
 カール・ロスマンというプラハ生まれの17歳の青年が客船でヨーロッパからアメリ
カに渡って、遍歴する物語だ。カール役は5人の役者が演ずる。この自由さ、変幻自
在さ。
 舞台装置も役者たちがきびきびと用意し、片付ける。
 そして井手茂太の脱力系とも思えるユニークな振付。
 休憩を含め3時間40分という大作だが、あっと言う間に終わった感じで、見ごたえ
があった。
 カフカならではの迷宮を、忠実に演劇として再現していると思った。
 そしてラストにはぞっとする「失踪」の真相が明らかになる。
 札幌では約1時間短縮の旅公演バージョンで上演されるそうだが、どこがどうなる
のか今から楽しみだ。
 それにしても2作交互上演ということで、東京では前日に客席だったところが次の
日は舞台になっていたのだ(ちょうど正反対に)。夜を徹しての舞台撤去、敷設は大
変だっただろうなと思った。
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2007年12月18日

リゼット2008参加のご案内

今日は、北海道演劇財団が管理、運営する劇場、札幌・シアターZOO(中央区南11西1ファミール中島公園地下1階)の提携公演・リゼットについて紹介しよう。
リゼットとは、リピート・ズーの略称。つまり、シアターZOOセレクトの「質の高い」演劇を厳選した上で毎月上演し、演劇人口を増やす狙いだ。
これにはシアターZOO幹事が6人だったかいて、「あの劇団はまだ早い」とか「実は釧路でこれこれを見てきた。ぜひ札幌でも紹介したい」などとか話し合っている。実は私も幹事の1人で、2008年4月に加藤浩嗣セレクトの演劇上演が決まっている。
参加カンパニーのお得は、分かりやすく言えば、なんと劇場使用料が無料なこと。つまり土、日だけでも、また集客に自信があれば1週間借りても、ふつうなら10万円から20万円近くかかるところが、無料でよい。それだけ、お金を演劇自体にかけられ、芝居にも集中できるというものだ。
宣伝も共通パンフレットがあり、最低限は保障される。
そのかわり、あまた来る応募カンパニーから、先の幹事連中が「質の高さ」を求めて厳選するわけだ。
そのリゼットの上半期(2008年4月−9月)はすでに決まっているが、08年10月−09年3月の下半期は、まだカンパニー募集中。締め切りは08年1月7日(月)だ。
我こそはと思うカンパニーよ、ぜひ来たれ。
詳しくは北海道演劇財団の平田プロデューサーか笠島支配人、電話011・520・0710へ。
その時に、シアターホリックで見ました、知りました、と一声言って頂ければ、うれしい。
別にひいきにするわけではないが、どの程度、シアターホリックが周知されているか知りたいものなのだ。よろしく。
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2007年12月11日

札幌劇場祭2007

 札幌劇場祭・札幌舞台芸術賞2007の審査会が12月8日に行われ、演劇大賞に「あっちこっち佐藤さん」の11☆9(イレブン☆ナイン)、特別賞に「足跡のなかで」の劇団青羽(韓国)、「秘密の結婚」の札幌オペラスタジオが選ばれた。
 私は当日、芝居を見るために上京していたので、書面による審査講評を事前に提出していた。
 全体的なレベルも、まずまずの結果だったのではないだろうか。
 来年も楽しみである。
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2007年12月02日

遊戯祭07の2

 「遊戯祭07 死ぬ気で遊ぶ〜中島みゆき論」の後夜祭が12月2日夜、札幌・コンカリーニョで開かれ、出場4カンパニーのうち、劇団千年王國が最優秀賞を受賞、2008年度のコンカリ劇場使用権を獲得した。
 投票総数は74票。うち千年王國は32票で、ほかのff男盛りレコーズ、intro、yhsは20、18、4票(主催者発表がなく、順不同。順不同ですからね)だった。
 劇団千年王國は、札幌演劇界の女王様こと橋口幸絵が主宰する1999年設立のカンパニー。ケレン味の強いメリハリのある舞台演出と、叙情的な物語を特徴とする。2006年には日本演出者協会主催「若手演出家コンクール2005」で最優秀賞、観客賞を受賞した実力派だ。
 まさに今回は、もともと中島みゆきファンであったという橋口に、一日の長があったものと言えよう。それとも橋口の執念と言うべきか。テーマに真正面から体当たりした作品が評価された。
 おめでとう、橋口と千年の皆さん。またコンカリで素晴らしい作品を見せてください。楽しみに待ってるよ。
 追伸 私も、12月1日の釧路でのいとこの結婚式を欠席して、妻にだけ行ってもらって(俺の方のいとこなのに)、遊戯祭を見て、後ろめたいものがあったけれど、まあ良かった。妻には怒られますね。病です。今回残念だった3カンパニーの次回作にも期待しています。
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2007年12月01日

遊戯祭07

 札幌・コンカリーニョと、ターミナルプラザことにパトスで開かれた今年の「遊戯祭07 死ぬ気で遊ぶ」のテーマは「中島みゆき論」。
 うまいこと考えたなあ、企画者に拍手。
 という訳で、12月1日、4作連続で見た。今回は前回ほど疲れなかったな。なぜだろう。
 以下、あらすじはチラシから。
 1作目。ff男盛りレコーズ「帰れないものたち」(作・演出岩尾亮、モチーフ曲「南三条」、コンカリ)。
 目まぐるしく変化する南3条通で、当時と変わらない姿を留めている昭和の倉庫。大学の演研で共に過ごした仲間が、「10年後の12月12日、稽古場集合」と書かれた短冊を持って再会する。誰もが、そこへ帰れると思っていた…。出演は赤坂嘉謙、岩尾、岩田雄二、雨夜秀興、久々湊恵美、小島達子、小林テルヲ、渡辺香奈子。
 とても観客の想像力(創造力)に訴える作品だが、現実と過去を分かつ描写にもうひと工夫ほしかった気もする。
 2作目。intro「ビュー・ビュー・ティー」(作・演出イトウワカナ、モチーフ曲「化粧」、パトス)。
 バスを待つ女がふたり。そこへ現れるもうひとり。「わたし、ふられたの。今から彼のところへ行って、今まで渡した手紙を返してもらうの」。せめて今夜だけ、きれいになりたい。出演は田中佐保子、今井香織、あんどうけいすけ、宮沢りえ蔵、伊藤若菜。
 いかにも女性らしい繊細さの表れた作品。「銀河鉄道の夜」の世界をも思い起こさせ、ラストではすっきりした。
 3作目。劇団千年王國「ファイト!」(作・演出橋口幸絵、モチーフ曲「ファイト!」、コンカリ)。
 いくつもの物語を、スカルロックにのせて。冷たい水の中をゆうゆう泳ぐ、うろこのきれいな魚たちの物語。出演は榮田佳子、柴田智之、赤沼政文、細木美穂、坂本祐衣、堤沙織、山田亜寿砂、橘亜樹良。
 エチュードの発展形のような作品。理知的、様式的でありながら、同時に情緒的、叙情的でもある。思いもよらぬ仕掛けと動きでハッとさせたが、少々冗長にも感じてしまった。
 4作目。yhs「ループ・テープ」(作・演出南参。モチーフ曲「永遠の嘘をついてくれ」、パトス)。一人の男を待つ女たち。待つ動機は、それぞれ違っている。果たして男はやってくるのか。やってこないのか。手がかりはきっと、その古ぼけたカセット・テープに入っている。出演は青木玖璃子、東菜穂、岩渕カヲリ、小林なるみ、十日市恵子、三宅亜矢、イシハラノリアキ、小林エレキ。
 サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」の新版にも思えた。間合いの芝居が生きていて、心地よい緊張感だった。
 さて、最優秀賞はどこのカンパニーか。あなたも投票できる。12月2日にも公演はある。後夜祭は午後7時からコンカリで。公開審査会もあれば、イベントもあるそうだ。
 後夜祭で会いましょう。
posted by Kato at 23:54| Comment(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

足跡のなかで

 北海道演劇財団が本年度、日韓交流プログラムというものをスタートさせた。
 その第1弾は10月14、15両日のTPS「冬のバイエル」(作・演出斎藤歩)の光州公演(これは北海道文化財団と韓国演劇協会光州広域支会の交流の一環でもある)。
 そして第2弾が劇団青羽(チョンウ)「足跡のなかで」の札幌・シアターZOO公演である。
 これは今春のソウル演劇祭で大賞(作品賞)、戯曲賞(コ・ヨノク)、演出賞(キム・カンボ=青羽の代表)を受賞した作品だということだ。私は初日の11月29日に見た。
 中心街から離れたある町内。米屋の看板がかかった空家に、アトリエを探していた若い画家(イ・ホンジェ)が入居する。迷宮入りの妻子殺人事件が起きた場所だ。
 画家は静かに絵を描いていたいのだが、町内の人々が米を買いに来るようになり、ついには米だけばかりか雑貨一切を扱うようになる。そうするうち画家も、客だった女を妻(キム・エリ)とし、生活し始めるが、どうにもこの家の空間が気に入らなくなる。
 やがて妻の浮気、刑事(ユン・ヨンゴル)の出入り、ここで妻子を失った男(ユン・サンファ)との出会いなどがあり、画家はここを元のアトリエに戻そうとするが、客たちが反対して…という内容。
 今回は北海道出身の木村典子がコーディネーター・翻訳・字幕制作を担当した。
 元はと言えば青羽の札幌公演は、木村と、演劇財団の平田修二常務理事が旧知の仲だったことから生まれたことだという。
 芝居は哲学的でもあり、芸術論的でもあり、ちょっと難しい感がした。
 字幕を見ながらの観劇で、話し言葉でなく書き言葉を意識しながらの観劇だったので、情というより理が勝ってしまったということもあるだろう。
 感触としては、柱4本と棚3つという簡素な装置などから、TPSの「冬のバイエル」を思い起こしながら見ていた自分がいる。
 「哲学的」と書いたが、「冬のバイエル」が観客に想像の余地、思いの入り込む余地を残していたのと違い、結構説明的だったりもした気がする。
 韓国演劇にもいろんなタイプがあるのだろうから、これ一作ですべてを断ずる訳には毛頭いかない。
 ただ、出演者が登場、退場する時のひょこひょこした動きと、光の演出がとても印象に残った。
 演劇財団の日韓交流プログラムでは2008年5月にTPS「春の夜想曲」が韓国公演するほか、その前の3月7日から4月27日(予定)に「冬のバイエル」を韓国のサヌリム小劇場がロングラン公演(ソウル)することが決まっている。
 それに今年10月17日にソウルで、「北海道演劇財団・ソウル演劇協会の交流に関する協定書」が調印され、今後、札幌劇場祭大賞作品を軸に選考されたカンパニーの韓国公演という大きな話にまで広がっている。
 先行きがなんとも楽しみである。
posted by Kato at 23:03| Comment(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする