2007年06月03日

引越

 「引越」はシアター・ラグ・203(札幌)が同劇団の本拠地、札幌・ラグリグラ劇場で上演した(4月21日)。劇団主宰村松幹男の作・演出で、5年ぶりぐらいの再演∧改訂版∨とか。私の個人的事情もあり、身の毛のよだつようなサスペンス・ホラーだった。
 山田優作(柳川友希)とゆかり(伊東笑美子)は新婚夫婦。2千数百万円の資金でもって、この中古マンションを購入して引っ越してきた。
 と思ったら、30数戸あるうち、その3戸だけが専業主婦という3人組、蔓巻(高橋久美子)、亀多(久保田さゆり)、壺井(吉田志帆)の3人があいさつに来て長居をする。当惑するゆかり。
 後日、蔓巻が「幸福を呼ぶ」鉢植え、亀多が「無病息災」の亀、壺井が水を入れて擦ると「願いが叶う」という壺を持ってくる。困惑するゆかり。
 数日後、鉢植えも亀も壺も、部屋を占領するように増えてきている。何があったのか。困惑する優作に比べ、ゆかりは何か不敵な面持ちのようだ。ゆかりに何か変化があったのか。
 不動産業者高田(田村一樹)の案内で、この中古マンションの別の部屋を考えている客の夫婦(村松、田中玲枝)がゆかりたちの部屋をモデルルームとして見に訪れる。売買が成功すれば、ゆかりたちにも数万円が入るということだったが、不調。鉢植えも亀も、壺もなお増えている。どこまでいくのか。
 3人組に同じく専業主婦のゆかりが加わり、いまや4人組である。ゆかりも今は困惑することもなく、3人と同様の様子である。さて夫の優作の姿は。
 いかにも引っ越し先で起きそうなことの連続で、一緒に見た家人は「怖い」との感想であった。無論、私だって怖い。いや、私の方が怖がってしかるべきではないか。なにせこの結末である。
 実は6月(もう今月になってしまった)に我が家でも引っ越しを控えているのだ。他人事ではない。あろうことか、優作がこうなってしまっての(いつか再演で見てください)結末である。怖いったら、ありゃしない。
 芝居としては、サスペンス・ホラーだからといって、怖い場面をことさら強調するのではなく、淡々と日常を描写する中で心理的に観客の心情を怖がらせてゆくその手管が実に巧みだった。
posted by Kato at 01:31| Comment(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする