2007年03月22日

虹と雪のバラード

 また間が空いてしまった。数見てはいるのだが、書く段になるとついつい怠け癖が出てしまう。
 北海道演劇財団主宰劇団TPS(シアタープロジェクトさっぽろ)の第22回公演「虹と雪のバラード」(21日、札幌・シアターZOO)はTPSチーフディレクター斎藤歩の作・演出。
 ご存知の方も多いと思うが、この題名は故河邨文一郎氏が書き(詞)、男女のデュオ・グループ、トワ・エ・モアが歌った、1972年の札幌オリンピックのイメージソングだ。
 「バラード」というからには、斎藤の静かで落ち着いた佇まいの作品「冬のバイエル」のような雰囲気のものを想像していたのだが、この予想はまったくもって明るく裏切られた。
 この芝居版「虹と雪のバラード」、なんとスラップスティック調の七転八倒、笑いどころ満載の冒険譚なのである。
 舞台はオリンピックから35年経った札幌。国に搾取され続けてきた北海道の独立共和国化を画策する芥川(高田則央)、英美子(宮田圭子)、沙希(内田紀子)がいて、それを阻止しようとする国家警察の刑事、ゴリ(林千賀子)、スコッチ(岡本朋謙)がいる。そこに、妹を探して新ひだか町からやって来た男(川崎勇人)や、会社をやめようかどうか迷っている本郷(木村洋次)が絡む。また、ロシア製の人形マトリョーシカに電子楽器テルミンを組み込んだ不思議な楽器マトリョーミンを駆使する占い師(?)の女(山口清美)と沢田(永利靖)も微妙に擦れ違う。
 どうです? ネタばれが過ぎないように書いていることもありますが、何がなんだかまったく分からないでしょう。
 その分からなさが、実は今回の芝居の魅力。物語としては一筋縄ではいかないんだけれども、パワフルで、ごちゃごちゃ混沌として弾けていて、物語の内的な世界はそれなりにつじつまが合っていて、唐十郎らのテント芝居の猥雑なテイストも感じられて、いつの間にか引き込まれてしまっていた。
 これが舞台の力というものだろうか。昨今のTPSのこじんまりとまとまった作品とはまったく違う感じの、訳の分からなさ、破天荒さなのだが、そこにこそ今回の演劇の最大の魅力を感じたのだ。
 劇中、昨今のTPSの定番となった楽器演奏もあるが、さすがに上達はしてきた様子。それらも含めて、つまりはごった煮の味わいなのだ。
 この芝居、劇場空間にもひと工夫がされてあり、通常の観客席を舞台にし、通常の舞台部分に片仮名の「ニ」の字のように客席を設えてあるのである。「ニ」の間には花道があって、特別の仕掛けもなされている。こうした趣向も、テント芝居のテイストを感じさせる効果があったのだろう。
 また内容は、17日に札幌・道新ホールで見たKOKAMI@networkの「僕たちの好きだった革命」(企画原作・脚本演出鴻上尚史)ともちょっとダブっていて、現代を、北海道に生きる私たちを批評しつつ鼓舞してもいたのだった。
 鋭敏な舞台人は、時代の息吹を芝居に反映させるということだろうか。
 ともあれ「虹と雪のバラード」は25日まで。一見されたい。
posted by Kato at 23:56| Comment(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする