2006年05月26日

 札幌にシアター・ラグ・203という知る人ぞ知る実力派劇団があって、ウェンズディシアター(水曜劇)なるものを行っている。読んで字のごとく、2、3カ月にわたって毎週水曜日の午後8時から1つの作品を上演する企画だ。
 これは書くのは簡単なことだが、なかなかできるものではない。
 1つには公演場所が常時使える状態でなければならないこと。これは幸い、この劇団の本拠地でもあるラグリグラ劇場(南区澄川3の3、電話011・813・8338)があることによって解決している。
 もう1つには、なんと言っても劇団員のやる気の問題だ(その点では、条件が許すならばやってみたいと考えている札幌のアマチュア役者たちが大勢いることも書き添えておかなければならない)。
 こうした上演企画はまた、劇団内外に付加価値をもたらす。
 例えば在籍劇団員全員をある意味で立てなければいけない本公演とは違って、その一定期間に限って出演できる役者に絞って実験的な試みを打つこともできるというわけだ。
 実際「水曜劇」は始まってから5年ほどになり、1人芝居から最多で4人が出演するものまで、さまざまな種類の作品群がそろい、中には再演どころか5演、6演を重ねている名作もある。
 劇団代表村松幹男以下、劇団員のその意気やよし、だ。
 というわけで、村松の作・演出による3人芝居「箱」(10日、ラグリグラ劇場)だ。これは「水曜劇」16弾である。
 平凡なOL土井信子(久保田さゆり)がひょんなことから小さな箱を見つけたことをきっかけに謎の女、早乙女慶子(田中玲枝)、謎の男、神山遊三(柳川友希)と出会い、不思議な言葉の迷宮に陥る物語だ。
 それは時に哲学的だったり、時に冗談、お笑い、楽屋落ちだったりもする。数多くの箱たちの出入りの見事さも見ものだと書いておこう。
 印象を端的に書けば、初日だからか、硬かったということに尽きる。この芝居の中のせりふには、耳を傾けて内容をしっかり聞いた方がよいものもあれば、(見る側が)ただ言葉の渦の中で流れに身を任せてしまった方がよいと思われるものもあるのだが、役者陣がどのせりふもしっかり聞かせようとしてしまっているのが、ちょっと違うような気がした。
 ただ作品としては「人は誰しも自分に固有の箱を持っている」というせりふに代表されるように、十分に独特の世界観を表現しており、今後いっそう練り上げられればますます面白くなっていくであろう。
 それにしてもこの劇場の照明は何度見ても素晴らしい。青い一筋の細い光一本で、その向こうが深遠な世界につながる回路に思えてくるから不思議だ。
 先に書いたように、この作品は毎週水曜日に上演されており、6月には早乙女役が吉田志帆に代わる。
 常打ち小屋を持ち、こうして作品を練り上げ、深めていく姿勢を劇団員が持続していることで、私は「ラグ」の大ファンであることを宣言しておこう。人はそれを「裏ラグ」という。
posted by Kato at 00:43| Comment(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月14日

おかえりコンカリーニョ

 コンカリーニョとはスペイン語で「愛をこめて」の意である。
 元々はJR琴似駅の北口にあった札幌軟石造りの趣のある倉庫を活用した劇場であった。それが駅北口の再開発で2002年をもって活動が休止され、取り壊されたのであった。
 以来、コンカリーニョはNPO法人格を取得し、斎藤ちず理事長以下、さまざまな人たちの多方面にわたる尽力で、劇場が再建されたのだ(札幌市西区八軒1西1、ザ・タワープレイス内)。
 5月7日に催されたのは「コンカリーニョ生誕祭」と銘打たれた8月27日までの多彩なプログラムの第1弾。「コンカリレビューショー 劇中歌でつづるコンカリ今昔」であった。
 現在の北海道演劇財団主宰劇団TPSのチーフディレクター斎藤歩、それに斎藤ちずらが活躍した「札幌ロマンチカシアターほうぼう舎(ちょっと難しい字なので文字化け防止のため、ひらがなで書く)」時代の1988年の作品から、今年の「とんでんがへし琴似浪漫」まで16作品の歌や踊り、劇中の1場面をつづっていくという手法(構成・演出斎藤ちず、音楽橋本幸)。
 これが実に多彩な内容で、あっと言う間に過ぎた2時間であった。
 私個人の好みで言えば、昔の作品のたぎるような熱情が今見ると何とも言えないある種の懐かしさを伴って胸に迫ってきたのであった(昔見ていた訳ではないのだが)。
 かなうはずのないこととは分かっているが、昔の作品をぜひ見てみたいと思ったのは私だけではないだろう。
 天才子役の発見もできたし、実に収穫の多い企画であった。
 最後にコンカリーニョ再建を実現させた関係者の多大なる努力に敬意を表したい。
 おかえり、コンカリーニョ。本当に本当にありがとう。
posted by Kato at 22:13| Comment(0) | 劇評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする